第55回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会副会長
森昌平
宮城県薬剤師会理事
高橋均
後発品の供給問題として、2019年に海外における原料医薬品の製造トラブルに起因した抗菌薬の供給停止を経験した。また、新型コロナウイルス流行下の現時点においては、一部の解熱鎮痛剤の出荷制限という思いもよらない状況をも経験している。何よりも20年から続く後発品の供給不安定は未だ解決が見えず、その影響は先発品の供給にまで波及している。
本来薬剤師には、医療に必要な医薬品を適切に提供する責務がある。そして、薬局と薬剤師は国の指針のもと、これまで後発品の使用促進に努力してきた。しかし、相次ぐ後発品における流通の障害は、後発品の品質への不安につながり、ひいてはこれまで後発品の普及に努めてきた薬局、薬剤師への信頼を損なう事態となりかねないほどに深刻である。
本分科会は、この問題を厚生労働省、製造企業、医薬品卸業、薬局、各々の立場で検証し、医薬品の安定供給の確保に向けた議論の機会とすることを目的としている。
まず基調講演として、山本剛厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課ベンチャー等支援戦略室長に、行政の立場から「医薬品の安定供給に向けた行政の取組みについて」として講演いただく。次いで医薬品を供給する立場から、川俣知己日新製薬代表取締役社長/日本ジェネリック製薬協会副会長から「後発医薬品の安定供給の現状と将来展望-製造の立場から」、山口聡一バイタルネット取締役執行役員物流本部長から「後発医薬品の出荷調整に対する医薬品卸の対応」として製造から供給に至る過程における方策について講演いただく。最後に薬剤師を代表する立場として、小田真稔福岡県薬剤師会専務理事に「医薬品提供体制の現状と薬局・薬剤師の役割」として、今薬局で感じている問題についてお話いただく。
私たちが経験している医薬品供給体制の脆弱さは、なぜ生じてしまったのか。また、今後このような事態を生じせしめないためには何がなされるべきか。本分科会を通して得られる知見を日々の業務に生かしていたければ幸いである。
(高橋均)