新発売、抗癌剤混合調製ロボットが登場‐亀田総合病院で5月から稼働 トーショー

2010年04月12日 (月)

 トーショーは、抗癌剤の混合調製をロボットが無菌環境下で自動的に行う装置「CytoCare」(サイトケア)を新発売した。医療従事者や患者が抗癌剤に暴露される危険性を減らせるほか、人為的なミスのない、確実で正確な調製を行えることがメリット。世界では2006年以降、20カ国約50施設で稼働している。日本では初めて亀田総合病院が導入、5月から稼働を開始する。

抗癌剤暴露防ぎ人為的ミス防止

yakuji_photo
20カ国50施設で稼働するサイトケア(上)と装置内で動き回る産業用ロボットアーム
yakuji_photo

 抗癌剤は正常な細胞にとっても毒性がある。混合調製時にエアロゾル化した抗癌剤を吸入したり、しぶきや跳ねによって皮膚や目に抗癌剤が付着し、体内に取り込まれると危険だ。サイトケアは、混合調製を自動的に行うことで、抗癌剤の人体への暴露を防止できる。

 操作者がサイトケアに抗癌剤、輸液、シリンジ、針などをセットすると、産業用の多関節ロボットアームがそれらを摘んで、クラス100の無菌エリアに移動させる。このエリア内で、バイアルに注射針を刺し込んで、抗癌剤を抜き取ったり、輸液バッグに注入したりする混合調製の作業が、ロボットによって全て自動的に行われる。使用済みの容器や注射器は、専用のゴミ箱に自動的に廃棄され、密封された状態で安全に取り出せる。

 また、受信した処方や患者のデータをもとに、抗癌剤など各種薬剤や容器の重量を、精密電子天秤で0・01g単位まで測定しながら作業を行うため、人為的なミスはなく、正確で確実な調製が実現する。調製過程は重量を含めて正確に記録されるため、トレーサビリティ(追跡可能性)が高まる。

 混合調製の処理には、人が行う場合に比べて約3倍の時間を要する。ただ、これは重量測定による鑑査を行うなど、人での作業にはない工程が入っているためだという。

 サイトケアは、抗癌剤に特化した世界初の自動調製装置として、イタリアのヘルスロボティクスが開発した。トーショーはそれを輸入し販売する。奥行きは約160cm、幅と高さは約220cm。1台の価格は約1億5000万円と高いのが導入のネックだが、長期的な視点で癌拠点病院を中心に導入を働きかけていく。亀田総合病院のほか、国立がんセンター中央病院でも11月から稼働する見込みだ。

 岡山市内で開いた会見で、亀田総合病院薬剤部長の佐々木忠徳氏は、サイトケア導入の理由として、[1]人為的ミスによる事故の発生防止[2]医療従事者や患者の安全性向上――を提示。導入やメンテナンスに費用はかかるが、「医療スタッフが何らかの健康的な被害を受けたり、事故につながったりすることを考えて、経済性を分析しないといけないし、有用性はある」と話した。

 亀田総合病院では5月の導入以降、早い段階で抗癌剤混合調製業務の50~70%程度を、サイトケアに置き換える計画だ。将来は複数台を導入し、抗癌剤混合調製業務の全てをサイトケアに移管したい考え。浮いた薬剤師のマンパワーを、副作用の発現防止など臨床業務の充実に充てたいという。

 ロボットの利用は海外で活発だが、最近になって日本でも、PTPシートを1錠単位で切断し自動的に払い出す装置や、水剤自動調剤装置が発売されるなど、計数・計量調剤をロボットによって自動化する動きが高まっている。注射薬については、調製を自動的に行うロボットが、海外で01年頃から登場している。今後、各業務をロボットに移管しつつ、薬剤師の職能をいかに発展させていくかが注目されるところだ。



‐AD‐

同じカテゴリーの新着記事

薬剤師 求人・薬剤師 転職・薬剤師 募集はグッピー
HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術