厚生労働省がん対策推進協議会のがん研究専門委員会は14日、未承認や適応外の抗癌剤を対象とした研究者主導型の臨床試験を、ICH‐GCP水準へ引き上げることで一致した。薬事法でGCP準拠を義務づけているのは、承認データの収集を目的とした「治験」のみだが、新薬承認や適応拡大を念頭に置く全ての臨床試験で、申請に活用できるレベルの質を確保すべきと判断した。2012年度からの第2期がん対策基本計画へ反映するよう、協議会へ提言する。
臨床試験は、必ずしも承認申請を意図したものではなく、学術的な観点から治療を兼ねて行うこともある。そのため、臨床研究倫理指針などのガイドラインで規制しており、承認につながる成果が得られても、申請用に企業治験を改めて行う必要がある。
一方、欧米は治験、臨床試験ともにGCPで規制しており、日本は国際的に見ると特異だ。ただ、欧州連合が2001年に臨床試験指令を発し、全ての臨床試験にGCP準拠を求めたところ、研究者が振るいにかけられて、臨床研究の数が減少した経緯がある。
この日の会合では、大津敦専門委員(国立がん研究センター東病院)が、GCP対応を必須化して、世界水準の臨床試験環境を整える方向性を提案した。
これに対し松原久裕専門委員(千葉大学病院)は、「規制をかけると多くの臨床試験がストップする」と懸念し、中西洋一専門委員(九州大学病院)は、「いずれはそうならざるを得ないが、期間を設けて努力目標にする方がよい」と慎重姿勢を示した。
しかし、大津氏は「クオリティの保証がないと、企業が乗ってこない」と、テコ入れの必要性を強調した。
最終的に、既承認の範囲内で行う臨床試験を除き、承認申請を目指す臨床試験については、一定の猶予期間を置きながら、GCP対応を求めていくことで合意した。
このほか専門委では、臨床研究の推進方策として、▽癌研究の調整・支援を行う機関の設置▽倫理審査委員会の判断事例の公開▽世界基準の臨床試験施設への財政支援▽人材確保のための公的研究費の運用改善――などを確認した。
また、ゲノム、疫学、臨床など複数ある研究倫理指針を統合して、共通部分と個別部分に分けて記述する形式に改めるよう求めていく方針も決めた。