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薬剤師は患者に後発医薬品の情報をどのように伝えれば良いのか――8、9の両日に京都で開かれた医薬品情報学会では、この問題が焦点の一つとなり、シンポジウム「後発医薬品と医薬品情報」で熱い議論が展開された。「国が認めているから大丈夫」という説明では不十分だとし、先発薬と後発薬の異同を薬剤師がしっかり認識した上で、患者に説明すべきとの意見が多く聞かれた。ただ、両者の同等性をどう解釈し、患者に伝えるかという具体的な方策については、それぞれが悩みながら対応している状況が示された。
基調講演を行った政田幹夫氏(福井大学病院薬剤部)は、先発品と後発品では製造方法や添加物が異なり、安定性や吸収性に差があるため、「(両者を)違うものと認識して使ういことが必要」と指摘。患者に説明する際にも「国が認めているから同じですと話すのでは、逃げている薬剤師」と厳しい見方を示し、リスクまで含めて後発品の情報を患者に伝える必要性を強調した。
北澤京子氏(日経BP社日経メディカル編集部)も「国が認めていると説明している人が、(臨床現場には)意外に多いのではないか」と述べ、これは薬剤師の専門性に関わる問題だと語った。
医師の立場から池田俊也氏(国際医療福祉大学薬学部)は「後発品の効き目は先発品と同じと印字されている処方せんがある。生物学的同等性は証明されているが、治療学的同等性は証明されておらず、(厳密に言えば)効き目が同じという表現は不適切」とし、「後発品のメリットやデメリット、製品ごとの特徴について、分かりやすく適正な情報を提供することが、薬剤師の行う説明ではないか」と話した。
一方、違いの具体的な伝え方については、会場から「同じ成分なのにどうして効き目が異なるのか、患者にどう説明すればよいのか分からない」「先発品と全く同じではなく近い薬であり、副作用も同じとはいえないなどと伝えているが、説明は難しい」などの声が上がり、対応に苦慮している臨床現場の実態が明らかにされた。
この点について政田氏は、単に後発品と先発品は違うと伝えるだけでは「患者さんはびっくりされる」とし、リスク情報をどのように伝えるのか、「リスク・コミュニケーションのあり方を考えていかなければならない」と述べた。
米国の病院で、薬剤師として十数年勤務した陳惠一氏(水野薬局)も、「違うかもしれない、効かないかもしれないと伝えるのは正しいと思うが、(プラセボ効果によって)効かなくなる場合もあり、事実を伝えるのは難しい」「全て同等とは限らないので、何かあるかもしれないと申し上げておき、何かあった時には電話してくださいと対応していた」と説明した。
米国の病院は後発医薬品の調査を徹底しており、品質に問題のないものを選んで採用するため、品質面で効かないという経験はなかったそうだが、後発薬は効かないと信じ込み、「効かない」と主張している患者に遭遇したこともあったと話した。
患者への情報伝達に薬剤師が頭を悩ますのは、先発品と後発品の同等性をどのように評価すべきかが明確ではない上、後発品の品質や副作用に疑問を投げかける報告も少なくないことが背景にある。
その具体例として政田氏は、▽造影剤イオパミドールの後発品の一部に、先発品にはない未知物質の存在が確認された▽塩酸リトドリンの後発品では、血管炎の起きる確率が先発品に比べ約10倍高いことや、その原因物質と推定されるチラミンが一部の後発品に多く含まれることが報告された▽国の基準は通過する範囲内だが、一部の後発品でAUCのバラツキが大きかった――などを提示した。
政田氏は、全ての後発品が悪いのではなく、問題があるのは一部だとし、どの後発品を使うべきかを選択するためにも、こうした検証が必要と強調。各病院が個別に検証するのでなく、国が中心になって取り組みを進めるべきとし、1960年代から生物学的同等性などについて議論を積み重ね、今なお「ジェネリック医薬品促進計画」として約60億円を投じ、厳格な審査や厳格な基準により品質を保証している米国を見倣って、「日本も努力する必要がある」と語った。