医薬品の供給不安問題が長期化している。最近公表された厚生労働省の2024年度診療報酬改定の結果検証にかかる特別調査でも、昨年11月における後発品の供給状況が23年11月時点に比べて「悪化した」と答えた薬局が全体の約4割に上ることが判明した。一般診療所、病院でも23年6月時点に比べ「悪化した」との回答がそれぞれ53.4%、63.3%に達し、医薬品不足の深刻化がうかがえる結果となった。
国民も供給不安問題に関心を持っているようだ。日本製薬工業協会がまとめた生活者意識調査の結果では、医療現場での後発品などの供給不安問題について「影響があり、身近な問題と感じる」との回答が40.0%に上った。この問題の要因と解決については、「製薬産業の努力に加え、国の制度・市場環境を含めた対応が必要で、早期の解決は難しい」との回答が60.3%となった。
こうした状況に対応しようと、製薬業界も解決に向けた様々な対策を講じている。一例として、日本ジェネリック製薬協会は、出荷調整などで医薬品の供給不足の恐れが生じた場合、新たに対応策の事例集を作成する考えを示している。将来的な事案発生の予防や早期解決への一助にするためとしており、同協会が設置する「安定供給責任者会議」で検討を始めるという。
一方の政府は、今国会で審議中の医薬品医療機器等法改正案において、安定供給体制確保に向けた体制整備を強化するため、特定医薬品供給体制管理責任者の設置の義務づけや、医薬品の出荷停止の届出義務づけ、供給不足時の増産など必要な協力の要請等を法定化することで対応していきたい考えである。
しかし、現場からは、法改正で医薬品供給問題の何かが変わるわけではないとの冷ややかな意見もある。今後、夏頃から26年度薬価制度改革に向けた議論がスタートするが、24年度薬価制度改革で安定供給確保に一定の対応がなされたものの、やはり根本的な薬価制度の見直しとセットでようやく供給不足解消に向けた一歩が踏み出せるのではないだろうか。
実際、本紙が製薬各社に実施した25年度中間年薬価改定に関するアンケートで、26年度薬価制度改革に向けた課題を聞いたところ、回答34社のうち約半数の16社が安定供給をより確実にする薬価制度改革を求めていた。採算性を悪化させる物価、原材料費の高騰に十分対応できていないとの悲鳴が上がる。
今冬にはインフルエンザやかぜのシーズンが再びやってくる。昨年同様、去痰剤や咳止めをはじめ様々な医薬品の不足が容易に予想され、国民もまた医薬品不足を実感することになるだろう。
業界も政府も策を講じてはいるが、薬価という最大の問題を解決しなければならないのは明らかだ。26年度薬価制度改革が供給不安解消の試金石となるか注目したい。