順天堂大学は22日、アビームコンサルティングとのAIを活用した医師の働き方改革実現に向けた共同研究で、医師の経験・ナレッジの活用を高度化する生成AIサービスの開発を開始したと発表した。医師・医局ごとに蓄積されたノウハウをでデータ化し、AIを搭載したナレッジデータベースとして医療現場で活用することで、診療業務の効率化を図ると共に、情報の標準化による地域間の医療サービスの格差縮小を目指していく。
両者が昨年11月から2027年10月(予定)まで取り組む、共同研究「AIを活用した医師の働き方改革実現講座」(代表研究者:同大大学院医学研究科神経学・服部信孝特任教授)を進めている。
今回の取り組みはその一環として行われるもので、医療業界で喫緊課題となっている医師の働き方改革および医療の均てん化に向けた業務改革に対するAI活用の有効性を検証するため、まずアビームが開発した簡易的に生成AIの業務利用が体験できる「生成AIスターターアプリ」を活用し、各種論文やガイドラインなどのデータを取り込んだプロトタイプアプリを構築した。
このアプリを、順天堂医院における脳神経内科、循環器内科、総合診療科の臨床現場で実際に運用し、その利用状況や医師へのフィードバック内容を分析した結果、優先して解決すべき事項として、▽医師のナレッジ・経験の組織全体への共有の不十分さ▽専門外領域に関する問い合わせ対応にかかるリソース負担――を特定した。
そこで、生成AI活用による診療業務の改革が期待できるユースケースとして、「医師の経験・ナレッジ活用の高度化・効率化」をテーマに選定し、サービス開発に向けた課題の研究および要件定義、PoC開発を開始。同大の豊富な医療知見とアビームの高度なAI知見を融合させ、医師・医局ごとに蓄積されたノウハウをデータ化し、診療現場でのナレッジ活用の高度化に貢献するサービスとして開発を進めていくことにした。
なお、同サービスは、高度な社会課題・経営課題をAIによって解決するアビームのサービス「AIソーシング」の一環として位置づけられ、今年7月までの開発完了および順天堂医院への試験導入を目標に進められる。その後は、同大医学部やその他の附属病院、他の医療機関にも導入可能なレベルへと開発・検証を重ね、将来的な製品化に向けたサービス開発を予定している。