富士フイルムは22日、皮膚内部構造を観察できるLC-OCT(ラインフィールド共焦点光干渉断層撮影)と独自のAIシステムを用いた画像解析技術と組み合わせ、皮膚の内部構造を非侵襲的に観察した結果、皮膚の内部構造(基底膜)と肌理(キメ)の形状に共通があることを発見した。この成果は、キメが皮膚の内部構造(基底膜)と連動して失われるという、老化メカニズム解明の可能性を示すもの。今後、同社は、これら成果を化粧品開発に応用していく。
表皮と真皮の境界には、凹凸構造を持つ基底膜が存在する。また、皮膚の表面には皮溝があり、その周囲に皮丘と呼ばれる肌が皮溝に囲まれて隆起している部分がある。この皮溝と皮丘が作る紋様がキメと呼ばれる。
基底膜の凹凸構造は、加齢に伴って平坦になる。一方、キメも加齢に伴って失われていくが、そのメカニズムは十分に解明されていない。そこで同社は、皮膚の表面と内部構造を解析することで、基底膜の構造がキメの形状に与える影響を調べた。
まず、LC-OCTで捉えた皮膚の内部構造を角層と表皮層(表皮細胞層)、基底膜、真皮層、キメに分類・表示できるAIシステムを開発。このシステムを用いた同社の画像解析技術を活用することで、皮膚の内部構造とキメの凹凸構造を同時に可視化した3次元画像で観察する手法を確立した。この手法は、皮膚の摘出時に組織構造を傷つけてしまう従来手法の問題点を解決し、皮膚内部構造をより正確に解析できるものだった。
次に、皮膚の内部構造とキメの形状を同時に可視化した3次元画像をもとに、キメの皮溝部と基底膜構造の位置関係を解析した。その結果、皮溝の下層に基底膜の凹部分が存在することを確認した。この結果は、キメの皮溝部と基底膜構造の位置関係が高く相似していることに加え、基底膜の凹凸構造とキメの皮溝部・皮丘部の位置関係も相似していることを示唆するものだった。
さらに同社は、キメの皮丘部の皮膚の厚みに着目し、基底膜の凹凸構造の上層にある皮膚(表皮)の厚みを測定した結果、基底膜の凹凸構造が集中している箇所では皮膚が厚いことが分かった。一方、皮溝部では凹凸構造と皮膚の厚みに相関がなかった。この結果は、老化に伴い基底膜の凹凸構造が平坦化することで、皮丘部の皮膚が薄くなり、キメが失われる可能性を示唆するものと考えられた。
この研究成果は7月4日、東京有楽町の有楽町朝日ホールで開かれる第50回日本香粧品学会学術大会で発表される。