骨太方針2025が閣議決定され、医薬品業界に関連する事項が提示されたことから、各課題に対する今後の業界対応が急がれることとなったが、一方で医薬品に関連する課題の一つに発癌リスクが懸念されているニトロソアミンの対応が挙げられる。
同問題は、2018年に原薬からニトロソアミン類の一つであるN-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたことを受けて、同原薬を使用した製剤を欧州全域で回収したことが大きく取り上げられたほか、国内外でサルタン系医薬品、ラニチジン、ニザチジン、メトホルミン等からNDMA等のニトロソアミン類が検出され、一部の製品が自主回収されている。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公開情報によると、自主回収医薬品は24~25年で9件となっている。
厚生労働省は、この事態を重視し、医薬品中のニトロソアミン類混入を低減・管理するための取り組みを進めている。21年10月に医薬品審査管理課長、医薬品安全対策課長、監視指導・麻薬対策課長の3課長連名による通知「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」を発出した。
通知では、各都道府県衛生主管部局長に、「管下の製造販売業者に対して、原薬もしくは製剤の製造または包装にかかる製造業者、添加剤、試薬、容器施栓系等の供給業者および原薬等国内管理人とも連携して、ニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検を行うよう指導願う」と要請しており、医薬品に関する製造、添加剤、試薬、原薬など全ての領域が対象に含まれた。
その後、22年、23年に自主点検に関するQ&Aと一部改正を事務連絡として示してきたが、昨年7月には、添加剤の極微量の亜硝酸塩と有効成分等由来のアミノ類との反応でニトロソアミン類が生成する知見が得られたことなどから、リスク低減措置の実施時期を今年8月1日まで延長することとなった。延期したとは言え、実質あと1カ月間しかなく対応が急がれる。
さらに昨年末には、関連業界団体へのアンケート結果を受け、自主点検に基づくリスク管理措置にかかる薬事手続き上の取り扱いを通知した。
先日開催された日本医薬品添加剤協会の総会でも取り上げられた。日本製薬団体連合会からの医薬品製剤中におけるニトロソアミンの発生防止等への協力依頼があったことを報告し、3月に会員約100社にアンケート調査協力を求めた。今年度の事業活動計画でも、医薬品製剤中のニトロソアミン発生防止について、引き続き日薬連と協議を重ねて対応すると記載した。
国民の健康・命に関わる問題には迅速・的確に対処しなければならない。特に、医薬品に携わる全ての関係者は、これらの問題を決して疎かにしてはいけない責務を負っていることを認識して取り組んでほしい。