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米食品医薬品局(FDA)は、優先審査の結果、Bayer社のケレンディア(一般名フィネレノン)を、左室駆出率(LVEF)40%以上の成人心不全(HF)患者の治療薬として新たに承認した。ケレンディアは非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)で、心臓と腎臓におけるミネラルコルチコイド受容体の過剰活性化を選択的に阻害する。同薬はすでに2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)の治療薬として承認されている。
Bayer社によると、米国では、LVEF40%以上のHF患者数が約370万人に上る。これらの患者は、心不全診療ガイドラインに沿った治療を受けてもHFによる入院率が高く、生存率に影響を及ぼすとともに、医療システムに大きな負担をかけているという。
今回の承認は、第3相試験(FINEARTS-HF)の結果に基づいている。過去12カ月以内にLVEFが40%以上であることが確認され、ランダム化前に少なくとも30日間、利尿薬を投与されていた症候性HF患者(ニューヨーク心臓協会心機能分類II~IV度)を対象に、ケレンディアの有効性と安全性を検討した。主要評価項目は、心血管死およびHFイベント(HFによる入院または緊急受診)の複合アウトカムであった。約6,000人の対象者が、HFの標準治療に加えて、ケレンディアまたはプラセボを1日1回、最長42カ月間投与された。
その結果、ケレンディア群ではプラセボ群と比べて、心血管死および全てのHFイベントの相対リスク(RR)が16%有意に減少した(RR 0.84、95%信頼区間0.74~0.95、P=0.007)。治療効果は、患者がナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬を使用しているか否かにかかわらず、事前に規定された全てのサブグループで一貫していた。
患者の1%以上で報告され、プラセボよりも頻度が高かった副作用は、カリウム値の上昇、低血圧、ナトリウム値の異常低下、腎機能の悪化に関連する事象であった。
FINEARTS-HF試験実行委員会の委員長である米ハーバード大学医学大学院およびMass General BrighamのScott D. Solomon氏は、「予後不良とされるLVEF40%以上の心不全患者が増え続けているが、FDAによるケレンディアの承認により、これらの患者の治療選択肢が拡大した。FINEARTS-HF試験で確認された臨床的有効性に基づき、同薬は包括的ケアの新たな柱となる可能性がある」と、Bayer社のリリースで述べた。(HealthDay News 2025年7月14日)
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https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2025/215341s009lbl.pdf