
蛭田社長
旭化成の蛭田史郎社長は4日、都内で開いた経営戦略説明会で、2010年度を最終年度とする中期経営計画「グロース・アクション2010」を見直し、特に医薬・医療事業、エレクトロニクス事業に集中するポートフォリオの転換を目指す方針を打ち出した。医薬に関して、蛭田氏は「スペシャリティーファーマのポジションを確立したい」との方向性を強調。今後、抗血液凝固剤「リコモジュリン」の拡大に加え、透析事業のグローバル化をテコに、15年には営業利益の4分の1以上を医薬・医療事業で稼ぎ出す構造転換を実現させたい考えだ。
医薬・医療事業は、10年度の売上高1580億円、営業利益173億円の達成を掲げていたが、今回の見直しでは、10年度に売上高1300~1500億円、営業利益120~160億円に下方修正した。ただ、医薬・医療事業は、次期中計の注力事業と位置づけており、15年には医薬・医療事業で営業利益の4分の1以上を占める構造に転換していく構想だ。
そのため医療事業では、人工腎臓を扱う透析事業で米ネクステージメディカルと提携するなど、グローバル化を加速。アフェレシス(血液浄化治療)事業では、米装置会社「テクニクロム」を買収し、ウイルス除去フィルター「プラノバ」と装置の融合による抗体医薬の製造プロセス事業に着手した。
さらに、先進医療機器事業に参入し、ミスズ・サンメディカルと合弁会社を設立。体内植え込み型補助人工心臓「エヴァハート」の事業展開を開始するなど、高成長追求事業として位置づける医療機器にも乗り出し、相次ぐ施策でポートフォリオの転換を急いでいる。
一方、医薬事業について、蛭田氏は「われわれのようなメーカーは、領域ごとの専門分野に活躍の場がある」との認識を示した上で、新製品の抗血液凝固剤「リコモジュリン」、抗ヘルペスウイルス剤「ファムビル」を重要視。「これら2新薬が11~15年に向け、大きな収益効果を上げてくる」と期待感を示し、「新薬を拡大しながら、第III相試験段階にある2品目の開発を進め、スペシャリティーファーマのポジションを確立したい」と語った。