
恩田氏

村田氏

石田氏

セミナー会場
サクラファインテックジャパン株式会社(代表取締役社長:恩田和人)は4日、東京・日本橋浜町センタービル内の本社事務所で、JA三重厚生連鈴鹿中央総合病院中央検査科の臨床検査専門医・村田哲也氏と広島大学病院診療支援部病理検査部門部門長の臨床検査技師・石田克成氏を演者に招いて、病理診断をテーマにしたプレスセミナーを開催した。また、セミナー後、同ビル内にある研修施設「さくらぼ」見学会を行った。
1.主催者あいさつ
2月4日は「ワールドキャンサーデー」。2000年2月4日、パリで開催された「がんサミット」から始まった取り組みで、「世界中のひとりひとりが、がんに関する意識を高め、知識を増やし、がんに対して行動を起こすことを目的」に設定された。今回のプレスセミナーは、がんの診断や治療にもかかわるテーマなので、この日に合わせて開催された。
セミナーに先立って恩田氏が、サクラファインテックジャパンのミッション「クラス最高のイノベーション、品質およびお客さまへの配慮を通じて、病理と患者さまのための一体化されたソリューション(商品、アプリケーション、サービス)を提供することで、がん診断を進展させる」などについて簡単に説明した。恩田氏は臨床検査技師でもある。
2.村田哲也(むらたてつや)氏:病院経営の問題点
村田氏は「本題に入る前に」といって病理検査についてまず説明した――(1)患者「最近胃の具合が悪いようで……」、(2)主治医「では一度内視鏡検査(胃カメラ)をしておきましょう」、(3)主治医「粘膜の一部をかじって調べることにしますね。1週間ほどで結果がわかりますから、10日後にまた来てください」、(4)主治医「検査の結果ですが、残念ですががんが見つかりました。今でしたら内視鏡での治療が可能な段階です。入院も1週間程度ですみますよ」、(5)患者「そうですか、それならその治療を受けます」、(6)主治医「無事終了しました。また詳しく検査をしますので、10日後に結果を聞きに外来へ来てください」、(7)主治医「検査の結果ですが、あなたのがんは早期のもので、今回の内視鏡の治療で取り切れていることがわかりました。追加の治療はいりません」
以上のやりとりの中で、「病理検査はどこに潜んで」いるだろうか。正解は、(3)の「粘膜の一部をかじって調べる」と(6)の「詳しく検査」、(7)の「検査の結果」。「粘膜の一部をかじって調べる」は「生検」という検査で、「体の組織の一部(病変部)から病理検査用の組織を採取すること」。「生検で得られた検体は病理検査室に運ばれる」。「詳しく検査」は、「病理組織標本の作成と診断」を行うことで、「病理組織標本に作製されたスライドガラス標本は臨床検査技師によって標本の質のチェックを受け、病理医による顕微鏡を用いた診断」が行われるという。「検査の結果」は「病理組織診断」といい、「病理組織診断書(もしくは報告書)となり、主治医のもとに届けられ、主治医から患者へ説明される」。
村田氏は、「多くの患者さんは、検査は自分を診てくれたお医者さんがやっていると思っているが、実際この生検、詳しい検査、検査の結果という一連のプロセスは我々病理の人間がやっている」と説明した。病理部門の業務としては、病理組織診断、術中迅速病理診断、細胞診、病理解剖(剖検)、免疫染色、分子病理診断、ゲノム医療などがあるが、「病理検査、診断を行う我々病理は、患者さんの前に現れることはまずない」が、病理の関わる検査データは「一番大事なデータ」であり、「患者さんの治療指針の推定に関わる一番大事なところになっている」と病理の重要性を強調した。
一方で、村田氏は副院長として病院経営にも関与していたということで、「最近は病院の経営が非常に厳しくなっている」と指摘。2024年度決算のデータでは、JA厚生連は149億2900万円の赤字、済生会は216億円の赤字。また、県立や市町村立の公立病院は83.3%が赤字で、赤字額はほぼ4000億円にもなっているという。原因は、コロナ補助金の廃止、職員給与費の上昇(前年比5%増)、医療材料費の高騰(前年比3%増)、国の医療費削減方針と診療報酬制度など。特に診療報酬については、「2年に1回の改定で、極端なことを言うと、2年前の物価レベルでしか医療費を請求できない」ということになる。今回の診療報酬改定では「3.09%のアップが出たけれど、トレンドとしては、医療費は削減方針なので、これからどうなるかわからない」という。
病理検査・病理診断に関わる報酬は、「病理組織作成料」が860点、「病理組織診断料」が520点などとなっているが、「問題は病理解剖」で、これは重要な仕事であるにもかかわらず「亡くなった患者さんには保険は適用されないので、これにかかる費用は病院の持ち出しになる」のだという。さらに、「病理判断料(130点)というのは開業医がもらうお金であって、要は病理が出した報告書を見て、私はこう判断しましたということでもらえるので、(病理医がもらえないのは)非常に不合理だと思っている」とも。また、病理検査室の収益は病理組織作成料と病理組織診断料の合計1380点となるが、「問題は、このお金は検査をオーダーした医師・臨床各科の方に入っていくのが普通」であり、「多くの病院で病理検査室は赤字部門と認識されている」こと。一方で、「それに見合う診療報酬の増加はなかなか見込めない。病理は、治療方針の決定や患者さんの予後推定に極めて重要なのに、収益が見にくく、場合によっては赤字とみられる」と病理から見た病院経営における問題点を指摘した。
2.石田克成(いしだかつなり)氏:病理診断の高度化を支える技術
石田氏は、(1)病理の仕事、(2)標本作成工程、(3)病理検査の進歩と業務内容の変化、(4)増加する業務への対策、(5)まとめ――について講演した。
石田氏は、「病理診断は、確定診断、最終診断と言われており、非常に重要な位置づけをされている」と病理の重要性をまず指摘。病理検査室のスタッフは、「医師である病理医、そして臨床検査技師、事務の方がいて、多くの病院ではこの三つの職種が一緒にチームとなって働いている」。病理医は、病理診断や病理解剖執刀などを、臨床検査技師は標本作製や細胞診スクリーニング、苗裔解剖介助などを、事務員は受付業務や報告書の確認・整理、各診療科との連絡などを行うという。
病理検査には細胞診と生検、術材があって、細胞診は細胞を検査し「病気があるかどうかというスクリーニングをする」、生検は病理組織の一部を検査し確定診断を行い、術材は手術材料(病理組織)を検査する。生検は「治療方針の決定に絶対的意義を持つ。ここで悪性になれば手術に行き、良性だったら経過観察となる」。
組織診の標本(ガラス標本)は、(1)臓器を10%中性緩衝ホルマリン液で固定、(2)切り出し、(3)パラフィン浸透、(4)包埋(ほうまい)・パラフィンブロック、(5)薄切(はくせつ)、(6)染色、(7)標本(診断)――などの工程を経て作られる。全行程で4、5日程度かかるという。標本をもとに病理診断報告書が作成され、それをもとに主治医が患者に検査結果の説明を行うことになる。ただ、「一部の病院では病理外来といって、病理の先生が直接患者さんに説明するところもある。しかし、ほとんどは、病理検査は陰で一生懸命働いている部門」だという。しかも「2019年にがんゲノム医療が始まって仕事量がすごく増えた。遺伝子検査の依頼もすごく増えて、仕事量もかなり多くなった」。だから「限られた人数で膨大な仕事をするためには、自動化は切り離せない状況になっている」という。
そんなときに、「どこの病院も手作業でやっている」パラフィン浸透や包埋のところを全自動でこなしてくれる包埋装置(a120)をサクラファインテックが去年の11月に発売した。石田氏の勤める広島大学病院では「2025年10月の約1か月間、早速このa120の導入シミュレーションを実施した」。その結果「従来は技師が手作業でやっていた包埋を、全部フルオートにすることによって、技師2人1日当たり1.5時間、合わせて3時間の作業を減らすことができた。これによって非常に作業効率が向上し、さらにパラフィンブロックの均質性というか、出来も非常に向上した」という。
石田氏は「病理は、患者さんにメリットある医療の高度化や個別化医療の進展に欠かせないものになっている。特にがんゲノム医療とかコンパニオン診断、これらは病理の検査がないとできないことなので、ますます病理診断の位置づけは大きくなっていくんじゃないか。自動化とかデジタル化とか、AIの利用とかそういうものに積極的に取り組んでいく、それがまた医療全体の質の向上に繋がるのではないかと考えている」と締めくくった。
3.さくらぼ見学会
「さくらぼ」見学会では、サクラファインテックジャパンが昨年の11月29日に新発売した全自動包埋装置「ティシュー・テック オートテックa120」の使い方説明などが行われた。

さくらぼ見学会

さくらぼ見学会
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