
島田専務
大洋薬品工業の新谷重樹社長は28日、名古屋市で開いた2010年3月期決算説明会で、今年10月1日付で代表取締役社長を退任し、後任に島田誠専務が昇格することを明らかにした。一旦、代表権のある取締役会長に就任するが、今年度末には代表からも外れ、43年間務めた同社経営の一線から退く意向を示した。その後の処遇は未定だが、会長職も外れ、相談役的な役割になる見通し。
説明会の冒頭、新谷社長は、前期に承認規格外の商品を製造・販売し、業務停止の行政処分を受けた不祥事について、「ジェネリック医薬品(GE薬)の使用促進を進めていた行政、三師会、JGA会員、医療機関の先生、患者さん方にご迷惑をおかけした」と謝罪した。
また、「ハード面では絶対に負けない工場だったが、人の心を管理するところが及ばなかった。手抜かりで社員教育の脆弱さがあった」と心情を吐露。既に4月以降、社内に再発防止委員会を立ち上げたほか、問題発生要因について調査し、問題点を再発防止委員会に答申する外部有識者委員会も6月から開催しているところで、「1年かけて対応したい」と述べた。
社長退任の理由については、先の日医工とサノフィ・アベンティスとの合弁会社設立の発表など、日本のGE薬業界もグローバル化、拡大化の動きが出ている中、「私の視点、能力に加え、年齢的にも今の500億円規模から1000億円に持っていくのは無理」と、今回の不祥事も含め、年齢的な限界を強調。「次のステップアップは島田氏にお願いする形にしたい」と語り、院政を敷く考えもないと説明した。
10月1日以降は、財務、管理本部と高山工場への投資案件など、金融機関に関わる部分は新谷氏が担当。工場生産管理や人事権などを島田氏に移譲する。新谷社長は、次期社長の島田氏について「再発防止委員会の委員長として、会社の細部までチェックしており、物事を分かっている。はっきりものの言える人で、これからの大洋薬品を担っていくのに最適な人物」と紹介した。
また、決算説明会で島田専務は、不祥事の経営への影響について、「10年3月期決算に関しては軽微だった」とした。今期4月実績では、全国の取引医療機関で、全品または単品取引がなくなったのが180軒ある一方、採用金額・品目ともに伸長したのが115軒、新規取引先も28軒あると説明。ただ、調剤薬局の伸び率は「他社と比較して遅れている。その意味で品質への信頼問題の影響はあったと認識している」とコメント。今期見通しは「今まで以上に厳しい。30~40億円減少しても仕方がない」としながら、再発防止に向けた取り組みで、信頼回復ができればが達成可能との見方を示した。
また、不祥事の原因の一つとして、品目数の増加に伴う社内体制の整備と、品質管理体制のバランスが取れていなかった点を考慮。7月末に、原料入手が困難なものや申請条件の溶出規格が下限値に近い合計29品目の承認申請を取り下げる。
今後の展望について、島田専務は「14年3月期に当社単独で売上高750億円を計画しているが、製造原価率の下がることがないGE薬企業の場合、品質保証や情報提供活動などコスト増の傾向が強い。利益率が下がる中で売上規模を追求するには、合従連衡も100%考えなければいけない」とM&Aも視野に入れた。その上で、「まず、再発防止委員会の目指すゴールとして、上場に耐え得る企業になること」とし、経営刷新に取り組む考えを強調した。