政府が11月28日に閣議決定した2025年度補正予算案は、総額21兆円超の経済対策のうち、医療・介護等支援パッケージに1兆0368億円を充て、医療分野の賃上げ・物価上昇に対する支援として5341億円が計上された。そのうち薬局支援については、法人規模に応じた傾斜配分となり、5店舗以下の法人には1施設当たり23万円、6~19店舗は18万円、20店舗以上は12万円が支給されることになった。
1回のみのワンショットの支援とはいえ、高市早苗首相が明言していた医療機関、薬局への支援が決定したことは、医療界、薬業界にとって安心材料と言える。
中でも今回注目すべきは、医薬品卸に対する継続的な安定供給のための支援として63億円が計上されたことだろう。インフレ基調の中で、流通コストの上昇により多くの取引が不採算に陥り、苦しむ卸に対する継続的な安定供給のため、予算措置による支援が行われることになった意義は大きい。
予算措置は、医薬品の供給不安問題や毎年薬価改定が卸の業務に多大な負担になっていることも考慮され、卸が医療保険制度下で継続して医薬品を安定供給し、流通コスト等の適正化に資する流通業務の改善・効率化を図るため、早急に安定供給の維持と強靱化に向けた取り組みを行う卸に支援を行うことが必要と判断された。
具体的には、供給不安時の安定供給確保、物流効率化、災害時の業務継続に向けた環境整備への取り組みを行う卸を認定し、認定卸に対して必要な経費を支援するというもの。骨太方針でも「医薬品の安定供給に向け、抗菌薬等のサプライチェーンの強靱化や取り巻く環境の変化を踏まえた持続可能な流通の仕組みの検討を図る」と明記されていた。今回、国は予算措置として医薬品卸の苦境に応えた格好である。
厚生労働省も卸の流通不採算に対応するため、流通改善ガイドラインに「流通コスト」を明記する方針を示し、製薬企業に価格設定時の必要なコスト意識を促す方向性を打ち出した。
また、インフレ局面での逆ざや問題に対し、薬価ルール見直しを求める声も出ており、何らかの対応が必要な状況となっている。
こうした中で計上された補正予算は短期的には一服の清涼剤となるが、カギになってくるのは今後の「継続的な」支援だ。26年度には薬価改定と診療報酬改定という厳しい足下の現実もある一方、こうした取り組みが社会インフラである卸を支え、医薬品の「安全保障」を強化する一助となるだろう。
わが国における医薬品の供給網は、長く危機の正念場に立ち続けてきた。ようやく光が差しつつある中ではあるが、その先に持続可能な安定供給体制の確立という道筋が見えてくることを期待したい。


















