薬局の事業承継支援が順調

武内氏
薬剤師の人材紹介や薬局の経営支援を手がけるユニヴ(本社大阪市)は、新卒就職から転職や独立、薬局経営まで一貫した支援を特徴としている。中堅・中小規模の薬局を中心に、新卒採用や中途採用の支援実績を積み重ねてきた。事業承継を検討中の薬局と独立希望の薬剤師をつなぐサービスをM&A仲介事業で展開する。武内弘之社長は「ここ1年で薬剤師の独立支援のウェートが高まってきている」と語る。
同社は、薬剤師向け転職支援サイト「ファーネットキャリア」と薬学生向け就職情報サイト「ファーネット」を運営。中堅・中小規模の薬局を中心に人材採用を支援している。
ファーネットキャリアは専属コーディネーターが求職者との事前面談を実施し、面接に同行するなどきめ細かいサービスが特徴で、事業の中核的な役割を担う。中途採用支援で関係づくりのできた薬局から、新卒採用、M&Aや事業承継の相談を受けるケースが多い。
ファーネットの登録学生数は約3800人。求人情報を掲載する薬局の経営者をインタビュー形式で紹介する「社長名鑑」のサービスが特徴だ。面接で対面するまで分からなかった経営者の考えを、学生はいち早く知ることができる。武内氏は「競合他社のサイトと差別化を図ろうと昨年夏に始めた。中堅・中小規模の薬局のカラーは社長やオーナーで決まる。昨今の厳しい環境の中で、どんなビジョンを持って経営しているか、どんな人材を求めているかなどを直接、学生に見てもらいたい」と語る。
2018年8月に立ち上げた薬局向け経営支援サイト「ファーネットビズ」では、M&A支援事業の実績を中心に掲載するなどサービス内容の充実をPRする。
同社が手がけるM&Aは小規模案件が多く、独立を希望する薬剤師につなぐケースが多い。M&A支援事業を強化するため、昨年11月に薬局の開業や売却を支援する「薬局バンク」を買収。従来から運営する独立希望薬剤師向けサイト「ファーネット独立」と合わせてサイト集客を図る。
これら二つの独立希望薬剤師向けサイト登録者とファーネットビズに登録する薬局をマッチングさせるサービスに力を入れる。事業譲渡を検討する薬局は紹介された人材を社員として採用して、後継者としてのスキルや人間性を見極める。独立を希望する薬剤師は、約束期間を経て、事業を承継して独立。営業権の取得費用や仲介会社に支払う手数料などが不要になるメリットがある。
また、独立のノウハウを教える「次世代を担う薬局経営者育成塾」を今年2月に始めた。財務や雇用、行政への届け出など薬局経営のイロハを教える。
「売上全体に占めるM&A支援事業の比率が高まっている」と武内氏。同社がここ半年間で独立希望薬剤師と薬局の仲介に成功した事例は月2~3件程度という。今年4月の診療報酬改定による技術料の引き下げなどを受けて、武内氏は「多くの薬剤師を抱えて利益を生み出せない店舗でも、1人薬剤師なら十分収益を見込める。独立の流れは診療報酬の改定以降、加速するのではないか」と展望する。
学生支援事業では、大学1、2年時など薬学生と早期に接点を持てる機会を増やす方針で、既に取り組む奨学金事業に加えて、キャリア支援セミナー、生活支援などにも力を入れる。学生に業界事情を伝えて、就職のミスマッチを防止する狙いもある。新卒時の就職を手厚く支援して、転職や独立支援サービスへと継続利用を促す考え。武内氏は「スタート地点の大学入学段階から関わり、転職や独立というキャリアの転換期まで支援していきたい」と語る。
ユニヴ(ファーネット)
https://www.univ.co.jp/