◆空を、黒い雲が覆い、真っ赤な炎が切り裂く。人が動物が、骸骨が慌てふためく――昨年を振り返った時、そんな絵を思い浮かべた。岡本太郎作「明日の神話」。原爆炸裂の瞬間だ
◆史上最悪の悲劇とは比べられないが、何かが瓦解し始め、右往左往させられた1年だった。尼崎の脱線、耐震偽装、子供の受難と安全は自明でなくなった。郵政民営化法案の参院否決による衆院解散、現実味を帯びてきた憲法改正は、国の土台を揺るがす問題だ。医療改革では皆保険制度の揺らぎが見え、薬価見直し論議では、ルールの原則を破る提案ばかりが政府からなされた
◆希望を見失いそうになる。魯迅の言葉を思い出す。「絶望の虚妄なることは、まさに希望と相同じい」。絶望も希望も虚ろだという。いずれにも振り回されず、己を見失うなという意味に思える
◆岡本の絵には、原爆炸裂の瞬間、同じくらいのエネルギーが人間から発せられ、「明日の神話」が生まれるとのメッセージが込められている。岡本、魯迅に共通するのは、希望があってもなくても、まず一歩を踏み出し、何かを生み出してきた人間観だと思う。それを実行して、再生の年にしたい。
「明日の神話」
2006年01月06日 (金)
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