今月4日の国家戦略特別区域諮問会議で「国家戦略特別区域調剤業務一部委託事業」について、大阪市が岸田文雄首相から区域計画の認定を受けた。これにより、国内で初めて調剤業務のうち散剤を除いた錠剤等の一包化業務について、処方箋を応需した以外の薬局への委託が大阪市域で可能となる。
同事業は、薬局やICT技術の専門企業や医薬品卸など38社で構成する薬局DX推進コンソーシアムと大阪府、大阪市が昨年9月に共同提案していたもの。一包化業務の外部委託により、薬剤師の対物業務を軽減することで生み出された時間を患者の服薬後のフォローアップや医師へのフィードバック、在宅医療や地域包括ケアなど、専門性をより効果的に発揮し、対人業務の充実につなげていくことが期待される。
区域計画認定の約1カ月前に、厚生労働省は同事業の実施要領を発出した。事業者は要領に則った手順書、委受託薬局間の契約書、対象業務を行う機器や配置図・性能に関する資料等を添付した事業確認依頼書を保健所設置市の大阪市長に提出し、市が事業者への確認通知を行った後に事業を開始できることになる。事業者には半期ごとに事業実施状況の報告を求めている。
先の記者会見で、横山英幸大阪市長は「患者の医療安全体制が確保されていることが大前提。市が国の実施要領に沿って、委受託にかかる体制や責任の所在、遵守事項等の確認を十分に行う」と強調。大阪市では来月1日から事業確認依頼書の受付を開始し、早ければ7月中旬頃から調剤一部外部委託事業が動き始めることになる。
事業の実証に向けて、1年前から検討を重ねてきたコンソーシアムでも、これまで同一店舗内で完結していた一包化業務を薬局間で委受託することになるため、まずは安全性の担保を主眼に置いて進めていくようだ。
一方、実施要領では対象業務の委託の実施は、予め患者やその看護者に説明を行い、同意を得る必要があるとしている。対象業務である一包化の多くは高齢者や介護施設入居者などの在宅患者が想定されるため、同意を得る手法も課題になりそうだ。いずれにしても、実施要領に則って実施するのは相当にハードルが高いイメージはある。
調剤業務の効率化に向けては、いわゆる「0402通知」による非薬剤師の業務範囲拡大や、全自動調剤ロボットの導入などを進めている薬局もある。ただ、人材確保や設備投資などコスト的に小規模薬局には負担が大きい。調剤業務の一部外部委託が、そうした業務効率化のオプションとして定着していくのかもしれない。
厚労省は、次期制度改正の検討テーマとして「調剤業務の一部外部委託の制度化」も提示している。実証事業の成果次第では、今後地域での薬局のあり方を大きく変える可能性もありそうだ。