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【薬局業務の効率化と質的向上を目指して】ゆうせい薬局(NeoX)

2024年07月31日 (水)

処方箋入力業務を効率化‐地域住民の健康支援に注力

約70年前に創業し地域に根付くゆうせい薬局

約70年前に創業し地域に根付くゆうせい薬局

 大阪市にあるゆうせい薬局は、地域住民の健康支援活動に注力するため、調剤業務の効率化に取り組んでいる。その一環としてNeoXが開発した処方箋入力支援サービス「薬師丸賢太」を導入した。スマートフォンやスキャナーで画像化した処方箋から自動的に文字を読み取り、電子化してレセコンに取り込めるサービスで、最新のOCR技術に人工知能(AI)を組み合せた同サービスの導入により、手間なく正確な処方箋情報の入力が可能になった。

 同薬局は大阪市西淀川区で約70年前に創業。近隣に大きな医療機関はない場所で、地域住民のかかりつけ薬局として定着し、月間3500枚以上の処方箋を面で広く応需している。

 創業時から住民の様々な健康相談に応じ、医薬分業黎明期からいち早く院外処方箋を応需。現在、年間で約670医療機関から処方箋を応需しているが、最も集中率の高い医療機関でも20%程度だ。在宅医療にも対応し、月間約500枚を応需する。

小西氏

小西氏

 厚生労働省が掲げる理想像を体現したような薬局で、OTC医薬品、健康食品等も幅広く販売する。同薬局代表取締役で薬剤師の小西明氏は「高齢で足腰が不自由な方などから『来局時に、生活に必要なものも購入できると助かる』との声を聞く。そのために、衛生用品や雑貨類などの商品を今も残している」と語る。

 健康サポート薬局の認定を大阪市で2番目に取得。薬局の2階に最大48人収容可能なゆうせいホールを設け、健康講座を開いたり、地域のイベントに開放したりして健康づくりを支援している。薬局内で脂質やHbA1c、血圧、体脂肪、筋肉量を測ることが可能だ。地域連携薬局の認定も得て、多職種と連絡を取り合いながら一元的に患者や住民を支える。

 目指す姿は「健康、安心、いきいき生活を地域の方に提供する薬局」。その活動を実践するには、「調剤業務の効率化が欠かせなかった」と小西氏は振り返る。

 様々な医療機関の処方箋を面で多数応需するため、在庫品目は多く、業務は煩雑になりがちだった。スタッフ数も多く、薬剤師10人、登録販売者6人(うち4人は一般事務兼務)、一般事務12人の28人体制で対応するため、ミス防止や業務の標準化が課題になっていた。

 2018年に隣接する自社ビルに薬局を移転したのを機に調剤業務の機械化を推進し、散剤自動分包機、錠剤自動分包機、一包化監査システムを順次導入。昨年1月に医薬品の個装箱をロボットアームがピッキングする自動入庫払出装置、同年8月にAIで在庫管理や発注を行うシステムを取り入れ、さらなる業務の効率化を図った。

 「最後に課題として残っていたのが、処方箋の入力間違い。どうしてもゼロにできなかった」と小西氏は語る。応需する処方箋の約半数はQRコード付きで、リーダーで読むとレセコンに情報を取り込める。残り半数のQRコードがない処方箋は、事務員が手作業でレセコンに入力する必要があり、間違いの発生を避けられなかった。ミスを減らすツールを探し、薬師丸賢太を昨年10月末に導入した。

手作業での入力間違い減少

 導入後は、受け付けた処方箋のうち、FAX受信を含めQRコードがないものは基本的にスキャナーで読み込む。最先端のOCR技術とAIを搭載した薬師丸賢太が、スキャナーで画像化された処方箋の情報を約10秒で自動的に読み取り、レセコンに送信する。FAXで文字がつぶれたり破損したりした処方箋は従来通り手作業で入力するが、その割合を全体の1割以下に減らせたという。

処方箋をスキャナーで画像化する

処方箋をスキャナーで画像化する

 入力の手間削減になったほか、入力間違いも減少し、正確な入力が可能になった。手入力の場合、継続的に受診する患者ではこれまで、レセコンに処方歴を表示し、目視で今回処方箋と見比べて変更箇所を入力していた。処方日数や規格、用法、用量、医療機関名や医師名等、前回内容からの変更箇所が多いほど、変更を入力し忘れる可能性が高まる。思い込みで見逃す場合もある。経験の浅いスタッフは薬品名の違いを見分けにくい。こうしたミスが薬師丸賢太の導入で減少した。

 同薬局ではレセコンと他の機器が連携しているため、レセコン入力後に間違いに気づくと、全ての作業をやり直すことになる。薬師丸賢太で入力時の間違いを防ぐことが最善で、全体を通して見ると業務の効率は良くなり、スタッフのストレスは小さくなった。

 医療機関によって処方箋様式が違っても、その違いを薬師丸賢太のAIが学習するため、使えば使うほど精度が高まる。自薬局用に育つイメージだ。

薬師丸賢太が画像化された処方箋の情報を自動的に読み取る

薬師丸賢太が画像化された処方箋の情報を自動的に読み取る

 このほか、外用薬が薬価ではない単位で記載されていても、gやmL等の正しい薬価単位に自動的に変換する機能や、力価計算する機能を備えていることも現場で役立つという。

 単に文字起こしをするOCRという概念を超えて、処方箋情報の入力を支援する薬師丸賢太。そのさらなる精度向上に期待している。

 薬師丸賢太の導入で調剤業務の効率化を実現できた。在宅医療を充実させるため、今年6月にはクリーンベンチを導入した。健康サポート機能もさらに強化したい考えだ。認知症患者やその家族の人に向けたオレンジカフェも引き続き開催する。

 地域には多くの外国人が居住し、1日数人は来局する。外国人患者向けに以前、西淀川区薬剤師会で各国言語別の初回質問票を作成。用法や用量を各国の言語で記した薬袋用シールは独自に作成した。

 NPOが開催する、地域に居住する外国人の子供向けの学習支援教室に毎週ゆうせいホールを開放するなど、外国人を含めた地域全体に「健康・安心・いきいき生活」を提供するため力を入れている。

ゆうせい薬局(NeoX)
https://www.yakumaru.ai/



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