アボットメディカルジャパン合同会社は22日、日本初となる経皮的三尖弁接合不全修復システム「TriCliシステム」が17日に製造販売承認を取得したと発表した。三尖弁逆流症(TR)は、これまでは積極的な外科的介入を行うことができない場合に薬物療法以外の選択肢がなかった。同システム導入で、薬物療法でTRの重症度や症状が改善されず、かつ、高齢や併存疾患を有するなど外科的手術が最適ではないと判断された患者に、カテーテル治療による新たな低侵襲の治療選択肢が提供されることになる。
同システムは、大腿静脈からカテーテルを挿入し、先端にあるクリップで三尖弁の弁尖を留めることで血液の逆流軽減を図ることができる。
同システムは、同社の経皮的僧帽弁接合不全修復システム「MitraClip」の技術を基盤に設計されている。2020年に初代TriClipが欧州CEマーク認証を取得してから、既に1万5000件以上の症例実績があり、現在、欧州、米国、カナダを含む50カ国以上で使用されている。国内での発売時期は、26年春を見込んでいる。
同システムの安全性と有効性を評価した国内のAMJ‐504試験は、適切な薬物療法を行ったにもかかわらずTRの症状が改善されず、三尖弁手術が最適治療ではないと判断された患者を対象に行われ、被験者37人中37人がTriClip術後12カ月時に全死亡または三尖弁外科手術実施を回避できた。また、術後12カ月時の心不全による年間入院率は1患者あたり0.03件だった。
心不全患者のQOL(自覚症状、生活の自立や社会参加)を評価するカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)のスコアは、術後12カ月時点で15ポイント以上改善した被験者の割合が22%だった。また、80%の被験者において、術後30日時のTR重症度が中等度以下まで軽減され(うち、46%は軽度まで軽減)、術後12カ月時においてもTR重症度の軽減が持続した。
富山大学第2内科、循環器内科・腎高血圧内科科長の絹川弘一郎教授は、「今後、わが国においてTriClipが実装されていく中で、再入院予防効果が患者に大きなベネフィットをもたらすことを期待している」と述べている。
また、アボット執行役員で、ストラクチュラルハート事業部長を務めるジュールス・コーステン氏は、「TriClipが重度の三尖弁逆流症の治療に立ち向かう日本の医師や患者にとって新たな希望となることを心から願っている。来春の上市に向けて、社員一丸となって取り組んでいく」とコメントしている。
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