世界医師会(WMA)が定める医学研究の倫理原則、いわゆる「ヘルシンキ宣言」が2024年10月、ヘルシンキで開催されたWMA総会で改訂されました。前の改訂から11年ぶりの改訂で、「被験者」が「参加者」に改められたほか本文の多くの箇所が変わっています。昨年の出来事ですが、医療機器や医薬品の臨床試験で必須となる「インフォームド・コンセント」などの根拠となる重要な文書であるにもかかわらず、あまり話題になっていないようなのでここで取り上げてみました。
ヘルシンキ宣言は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによる非倫理的な人体実験に対する医学者の側からの反省などとして1964年6月にフィンランドのヘルシンキで開催されたWMA総会で採択されたものです。以後不定期に改訂が行われ、昨年10月に60年ぶりのヘルシンキ開催となったWMA総会で改訂されたという経緯です。宣言の理念みたいなものは変わっていませんが。これで10回目の改訂となります。
今回変わったのは、まず「被験者」(human subject)という用語。これが「参加者」(participants)に変更されました。そしてタイトルが、「人間を対象とする医学研究の倫理的原則」から「人間の参加者を含む医学研究のための倫理的原則」へと改められました。余談ですが、ここで「人間の参加者を含む」とあるので、人間でない参加者もいるのかな、という疑問もわいてきますが、第1パラグラフ(全部で37パラグラフあり)に「世界医師会(WMA)は、本人を特定できるヒトの試料またはデータを用いる研究を含む、人間の参加者を含む医学研究の倫理的原則の声明としてヘルシンキ宣言を策定した」とあるので、人間でない参加者(?)は「ヒトの試料またはデータ」なのだと思います。
このほか、「主な改訂のポイント」としては「緊急事態でも原則は大事」「研究に伴う不平等への警戒」「弱者の「保護」とは」「研究に参加する側の視点を知る」「医学研究の情報・試料リソースの確保と管理」「未確立医療に関する要件の精緻化」があるそうです。ほかにも本文の多くの箇所が変わっています。詳細は、医学書院発行の「医学界新聞」を引用している厚生労働省のWEBサイトhttps://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001491448.pdfをご覧になってください。
「医療機器・化粧品」の記事に関するご意見・お問合せは下記へ。
担当者:河辺
E-mail:kawabe_s@yakuji.co.jp
TEL:03-3866-8499