NECはこのほど、日本全国の15~74歳の男女約2000人を対象に調査したレポート「AIとウェルビーイングに関する生活者調査」を公開した。その結果、AIの実装がより進んだ社会に必要なのは、効率化の先で人間がより人間らしく「納得解」を自ら導き出すための余白設計であることが分かった。また同社は、AIを全自動ツールにさせず、人が「対話」を通じて主体性を取り戻す、そのための関係設計こそが、これからのAI提供企業が担うべき真の社会的価値であるとの認識を示している。
同調査は6月、全国の15~74歳の男女2057人を対象に、インターネットでアンケートを実施した。
その結果、プライベートでのAI利用率は7割以上に達しているが、幸福感が「向上した」人は約18.2%、「低下した」は6.0%と、合計24.2%の人が、幸福感に変化があったとした。差し引きで見ると幸福感は純増(約+12.2pt)しているが、利用率7割超という数字に対して幸福実感の広がりはまだ限定的であり、「どれだけ使うか」ではなく「どう使うか」が重視されていることが示唆された。
また、同じAIを使いながらも、手応えを失う人と得る人がいる。AI利用によって「思考の自由度」「思考の自律性」は向上したと感じる人が多い一方、「達成感」については減ったと感じる人が優勢となっていた。「多少手間がかかっても自分の力でやり遂げたい(プロセス重視派)」は55.5%、「AIに任せても早く結果を出したい(結果重視派)」は44.5%で、プロセス重視派の63.7%が達成感の低下を感じていた。
ただし、プロセス重視派であっても、AIと対話・協働して使う層は幸福スコアが高い(幸福22.1%/不幸5.3%)のに対し、対話・協働型以外の使い方を行う層はむしろ不幸感が強い(幸福8.3%/不幸5.9%)ということが分かった。プロセスを重視する人ほど、AIを避けるのではなく、うまく対話しながら使うことが幸福感につながっていた。
対話しながらAIを使う方が幸福感を得やすいという結果でだったが、人は、「全自動ですべてをやってくれるAI」を求めていたのではないのではないか?今回の調査では、実際に求められているのは全自動型ではなく、伴走型・サポーター型の役割であることが見えてきた。
まず、AIの使い方については、使う人の半数は「AIが出したものを自分で確認・修正して使う(確認・協働型)」が50.5%、「対話しながら、自分の考えをまとめていく(対話型)」が28.6%で、合わせて79.0%を占めているのに対し、「AIの答えをそのまま使う(代替型)」はわずか11.7%にとどまっていた。
また、AIを使い込むにつれ、対話型の使い方が増える一方、確認型の割合は利用頻度によらずほぼ一定で、「最終判断は自分の手に残したい」という意識の表れと考えられた。
さらに、旅行計画や健康管理などの領域では、AIへの委任に前向きな人ほど、その未来を幸福と予測する傾向が見られた。しかし、「人とのコミュニケーションや人とのつながりの代行については、幸福感にはつながりにくい」ということが分かった。
自律性・主体性が脅かされるで不安感
一方、AIに対する不安といえば、「偽情報やプライバシーを脅かされること」だと言われてきたが、今回のデータでは、偽情報・プライバシーへの不安については、幸福層・不幸層の差は3ポイント前後にとどまり、ほとんど違いは見られなかった。これに対して、実際に幸福感を左右しているのは、「自分らしさが脅かされる」という不安だった。
「不幸になった」と感じる人が多いのは、「AIに行動を方向づけられる不自由さ」「人と直接話す機会が減る寂しさ」「自分のスキルが衰える不安」といった、自律性・主体性が脅かされる不安に対してであり、こちらは幸不幸の間に17.4~23.5ポイントの大きな差が見られた。企業には、情報基盤に関する不安への対応に加え、この主体性の不安への配慮が求められていると言える。
最もAIを使いこんでいる世代も、キャリアや進路など人生の選択に関しては、他世代以上に「人」を信じる傾向が強く見られた。
10代はAIの利用率が最も高い一方、AIへの不安感も他世代より強く感じていた。一方で買い物については、他世代と比べて4.6ポイント以上、健康についても14.8ポイント以上高く「人を信じる」と回答していた。AIと共に育った世代だからこそ、AIに頼る部分と人に頼る部分の境界線を理解しているのかもしれない。AIを使いこなす世代ほど人を大切にするという構図は、次世代の共生モデルの原型として捉えることができる。
また、AIが誤った結果を出す不完全さに対し、完璧を求めず、寛容に受け入れる姿勢がある人ほど、幸福が増幅する傾向も見られた。
AIに対して常に正確性・完璧さを求める層は、幸福になった人の割合はある程度あるが、不幸になった人の割合も平均の約2.1倍と高くなっていた。対して、利便性重視・柔軟に受け入れる層は幸福スコアが高く(幸福27.9~32.0%、不幸3.9~5.8%)、完璧を求めず寛容に受け入れる姿勢が幸福感につながりやすいということがうかがえた。
では、AIに携わる企業に求められているものは何なのか。よく懸念される安全性やプライバシー保護については、幸不幸にかかわらず土台として誰もが期待するものだった。
加えて、不幸感を抱く層は「人間らしさの尊重」「公平性」を求める傾向が強く、幸福感を抱く層は「何のためのAIか」というビジョンの発信を求める傾向が強くあった。企業の発信は、1.安全性、2.公平性・人間らしさ、3.目的・ビジョン、という欲求の階層を踏まえて設計する必要があることが分かった。
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