
自動メタボローム解析システム
神戸大学と島津製作所は10月20日、微生物の培養から、試料採取、細胞内の代謝反応の停止、遠心分離、代謝物の抽出、分析用プレートへの分注までの機能を一体化した、世界初の「自動メタボローム解析システム」を開発したと発表した。この成果は、微生物を利用して化学品や有用物質を生産する「バイオものづくり」において、目的に適した微生物株の選定や、生産条件の最適化を迅速化する基盤技術になると期待される。
メタボローム解析は、細胞や培養液の核酸やアミノ酸などを網羅的に測り、どのような状態にあるかを調べる技術。しかし、対象物質は数秒単位で変化するため、採取から処理するまでの時間差が、測定結果に影響を与える。従来は多くの工程を人が行っていたため、多数の試料を同じ条件で処理することが課題だった。
今回開発した装置は、あらかじめ設定した時刻に培養液を自動で採取し、冷却した溶液と混ぜて代謝反応を止めた後、細胞の回収と代謝物の抽出を自動で行う。試料はバーコードで管理され、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)で測定できる状態まで調製される。夜間や早朝を含め、設定した時刻に間欠的なサンプリングと前処理を行い、多数の試料を連続して処理できる。
また、カメラ画像、光学センサー、バーコードを組み合わせた多重チェックにより、各工程の状態と試料IDを確認・記録します。クエンチング後の自動試料調製工程における測定値のばらつきは平均8.8%であり、分析装置で繰り返し測定した場合の6.9%に対して、自動処理による増加は1.9ポイントにとどまっている。
さらに、研究や物質生産で広く使われている4種類の大腸菌を調べると、同じ大腸菌であっても、株ごとに代謝物の変化の仕方が明確に異なることが分かった。同システムにより、増殖速度だけでは分からない細胞内部の違いを、培養の進行に沿って捉えることが可能になる。
今回の成果は、医薬品原料、食品素材、バイオ燃料、化学品などの生産に向け、企業が微生物を選定する際に、同システムを活用することが期待される。また、目的物質の生産量が低下する原因や、代謝経路のどこに滞りがあるかを調べ、遺伝子改変や培養条件の改善につなげられる。
さらに、試料の処理時間や温度、試料IDなどを記録できるため、研究者や研究機関が異なる場合でも、比較可能なメタボロームデータが取得できるため、標準化技術としての展開も期待される。これにより、微生物の設計、作製、評価、改良を繰り返すバイオものづくりにおいてメタボローム情報の活用によるDBTLサイクル数の縮減や、再現性の高いサンプル調製が可能となるため、研究開発期間の短縮が期待される。
なお、この研究成果は、米国化学会が発行する国際学術誌「Analytical Chemistry」に、10月19日付でオンライン掲載された。
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