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日本食品化学学会の第19回食品化学シンポジウム「食の安全・安心をめぐって―課題の科学的検討と整理―」が11月2日、大阪市の大阪薬業年金会館で開かれた。この中で元日本食品添加物協会副会長の中村幹雄氏は「食品添加物の課題と功罪」について講演。国際整合性と消費者保護の観点が強まっていることを各製造業者は意識した上で、消費者に対する情報開示を推進し、根強く存在する負のイメージを払拭する必要があるなどと語った。
中村氏は、食品添加物の効果について「微生物による食品の腐敗や変敗を防止したり、食品に含まれる油脂などの酸化を防止したり、乳化や分散などの界面活性効果をもたらしたりする」と解説。チーズの製造工程ではレンネットという酵素、バニラアイスクリームでは香料のバニラ、梅干しでは調味液がそれぞれ欠かせない存在になっているほか、食品添加物があったからこそマーガリンという新しい食品を生み出すことができたと述べ、「食品添加物は加工食品の製造に欠くことのできないもの。だからこそ、日本では600008000億円とされる食品添加物の市場が形成されている」と話した。
しかし、こうした有効性はあまり理解されず消費者には「食品添加物は悪いものというイメージが無意識に染みついている」とし、無添加ハムや無添加ソーセージなど、巷には無添加と表示した食品が溢れていることに懸念を表明。2002年に日本食品添加物協会が『食品添加物使用の意義、有用性あるいは安全性に対する誤解をまねくと共に、食品添加物を用いた加工食品全般に対する信頼性を低下させる恐れがある』などとして無添加表示の自粛を要請したが、公正取引委員会を通じて実際にそれを厳密に規制するのは現状では難しいため、「行政に頼るのではなく、無添加については世論の形成が大事ではないか」と呼びかけた。
脂肪族アミン類と反応すると発癌性の高いニトロソアミンになるとして問題視されることが多い食品添加物の亜硝酸について中村氏は、▽アスコルビン酸の使用量を増やせばニトロソアミンの量は抑えられる▽食品添加物から摂取される亜硝酸の量は野菜から摂取される量に比べれば極めて少ない――などと解説。「亜硝酸に代わるものがないかと探す向きがあるが、そんなことは考える必要はない。亜硝酸を発色剤として堂々と使っていけばよい」と強調した。
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中村氏はさらに、「輸入食品の添加物は、名前はチェックされるが、相手国と日本の規格の相違はチェックされていない」と問題を提起。日本では、紅麹色素にカビ毒のシトリニンが含まれることがないように厳密な規格が定められている一方で、中国にはその規格がないが、検疫所ではそれはチェックされないとし、こうした現状を「消費者にアピールしていく必要があるのではないか」と語った。
このほか中村氏は、食品業界に関係する法改正として95年のPL法施行と食品衛生法の大改正が大きかったとし、その背景にある「国際整合性と消費者保護」を踏まえ、「消費者に正しい情報を伝える。一方的な情報伝達でない、双方向のコミュニケーションが必要。隠して儲ける時代から、開示して儲ける時代になっている。PL法が事業者の責任を明確にしている。この流れは決して変わらない。責任は重くなることはあっても軽くなることはない」と指摘した。
また、「事業者の責務をよく考え、消費者保護と国際的なルールに基づくことをやっていかないと、食品業界、特に添加物業界の立場は悪くなる」とし、国際的に汎用されている食品添加物の活用を日本でも推進するよう経団連が国に要請していることを理解し、「国際調和の流れの中で協力していかねばならない」と話した。