厚生労働科学研究班は、「ワクチンの非臨床試験ガイドラインおよびワクチンの臨床試験ガイドライン」(案)をまとめた。ガイドラインは、医薬品のICHガイドラインや、海外のワクチンに関する非臨床、臨床試験ガイドラインをベースに作成されたもので、非臨床試験をデザインする際に考慮すべき事項、臨床試験を行う上での留意点などが示されている。厚労省は30日まで、パブリックコメントを募集しており、早ければ今年度末にも正式なガイドラインをまとめる予定。
これまで、ワクチン開発に関するガイドラインはなく、個別の品目ごとに治験相談制度などを活用しながら開発が行われていた。しかし、国内初の子宮頸癌ワクチン「サーバリックス」をはじめ、インフルエンザ菌b型ワクチン「アクトヒブ」や、乳幼児向け肺炎球菌ワクチン「プレベナー」など、相次ぐ新規ワクチンの開発を受け、「企業側のワクチンに特化した指針に対するニーズが高まっていた」(厚生労働省審査管理課)という。
そのため厚労省は、医薬基盤研究所の山西弘一所長を主任研究者とするワクチン開発の厚生労働科学研究班に、ガイドラインの作成を依頼していた。
非臨床試験に関するガイドラインでは、ワクチン固有の全身毒性をはじめ、対象疾患のワクチン接種による発症、自己免疫や感作などの有害な免疫反応があるため、安全性試験の重要性を指摘している。
また、ワクチンの多様性や種特異性などを考慮すると、ヒトでの反応を予測可能とする、適切な動物モデルが常に利用できるとは限らないため、試験の種類、動物種の選択など、試験デザインを個別に考える必要性を示している。
ワクチンに使用される新規アジュバントについては、アジュバントと抗原の組み合わせにより、毒性反応に差を生じる可能性があるため、抗原の新規性の有無にかかわらず、新規アジュバントと抗原の両方を含んだ製剤での毒性評価も必要とした。
臨床試験については、第III相試験では、原則として発症予防効果をエンドポイントとし、適切な対照薬を用いた無作為化二重盲検試験を行うことを求めた。
ただ、疾患の発生頻度が低いなど、発症予防効果を有効性のエンドポイントとして検討することが困難な場合、抗体価などの代替指標を評価する試験デザインが適切な場合もあるとした。
海外臨床試験データを利用することを目的に実施する国内臨床試験では、海外と国内状況の類似点、相違点を明確にし、評価項目、評価方法などを設定すべきとした。