衆議院議員総選挙で、民主党が第1党となったことを受けて、日本医師会、日本薬剤師会は、新政権誕生に向けた見解を相次ぎ発表した。いずれも民主党に医療政策の充実を求めているが、日医が「新たに発足する政権与党に対し、今後一層強力な政策提言を行う」と、積極的なロビー活動を展開する方針を表明するのに対し、日薬は「今後の動向に注目したい」とするにとどまった。日薬の慎重姿勢には、民主党とのパイプ作りを進める一方で、来年夏に控える参議院議員選挙で、自民党から出馬予定の藤井基之氏の後援活動を続けることも背景にある。
長年にわたって、自民党の支援組織だった両団体にとって、今回の政権交代の影響は大きい。ただ、小泉政権以降の強力な社会保障費抑制方針に抵抗していただけに、医療の充実を掲げる民主党への期待もある。
選挙前、日医の中川俊男常任理事は、自公政権が進める年2200億円の社会保障費自然増抑制路線の完全撤回を明記した、民主党の政権公約を一部評価する見解を示していた。
日薬の山本信夫副会長は、「医療についての危機感は、どちらも同じように持っている。大きな違いはないと見ている」と様子見姿勢だったが、日本薬剤師連盟では自民、民主それぞれ2人の薬剤師候補を重点候補とするなど、今後の活動に幅を持たせていた。
総選挙後の2日、日医の唐澤祥人会長は『新政権にのぞむ』と題したコメントで、「新政権に対して、今後、国民が真に安心できる充実した医療政策を進めることを期待する」と表明。「今回の選挙結果は、国民一人ひとりが、医療を含めた社会保障制度を、より充実したものにすることを強く求めた結果であると考える」と指摘し、近く発足する民主政権へ、積極的に政策提言を行っていく考えを示した。
翌3日には、日薬の児玉孝会長が『政権交代に当たって』と題するコメントを発表。与野党逆転を「誠に大きな政界の変革」と称し、「新たな政権には、国民が安心して健康な生活を送ることができるよう、医療を含む社会保障制度をこれまで以上に充実させ、かつ安定した運用を期待する」との見解を披露。日薬の立場については、「医薬品の適正な供給を通じて、より安全な薬物療法の提供に今後とも貢献」として、民主党への対応方針に言及しなかった。