厚生労働省医薬食品局は9月29日、医薬品・医療機器等安全性情報(第261号)を公表した。2005年10月~今年7月のスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症(TEN)の副作用報告の集積状況や、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)による他害行為の分析結果を紹介している。
SJSとTENは、副作用として発現する皮膚障害の中でも重篤なため、特別に報告状況を集計している。今回対象とした過去3年10カ月間の報告件数は、2370件で、年平均618・3件だった。前回の年平均472・2件に比べると増加したが、年間500~600件の従来水準から外れるものではなかった。
2370件の転帰については、回復・軽快が1373件(57・9%)、未回復85件(3・6%)、後遺症あり84件(3・5%)、死亡239件(10・1%)、転帰不明589件(24・9%)となっているが、前回の転帰と大差は見られていない。
被疑薬は、400成分が報告されており、多かったのは、痛風治療剤のアロプリノール161件と、抗てんかん剤のカルバマゼピン131件。原因医薬品(推定)の薬効分類は、抗生物質製剤、解熱鎮痛剤、抗てんかん剤が多かった。
SSRI/SNRIによる他害行為をめぐっては、既に添付文書の改訂等で注意喚起を促しているが、今回、リスク因子探索を目的に、改めて222症例(女性111症例、男性110症例、不明1症例)を解析した。
その結果、他害行為のレベルについては、女性の71%がレベル0で、レベル1が23%、レベル2が6%だった。しかし男性は、46%がレベル0だったが、レベル1が33%、レベル2が21%あり、女性と違い,他害行為に至るものが多い傾向が見られた。
年齢についてみると、24歳以下での自殺念慮・自殺企図のリスク増大が添付文書により注意喚起されているが、今回の調査でも、他害行為レベルが高いほど年齢が下がっていた。
「大うつ病・うつ病」と診断されている症例に比べ、「うつ状態」「不安障害」「強迫性障害」といった障害を併存している症例で、他害行為レベルが高かった。また、過去に衝動的行為があった症例ほど、他害行為レベルが高いという結果だった。
このほか安全性情報では、禁煙治療補助薬のバレニクリン酒石酸塩(販売名=チャンピックス錠0・5mg、同錠1mg、ファイザー)が、直近1年間で同剤との因果関係が否定できない副作用として、抑うつ気分や不安などの神経症状が22例(死亡例なし)報告されたことから、使用上の注意の「警告欄」にこれら症状を追記するなど、関係者に注意喚起したことを紹介している。
警告欄では、同剤との因果関係は明らかでないが、抑うつ気分、不安、焦燥、興奮、行動または思考の変化、精神障害、気分変動、攻撃的行動、敵意、自殺念慮または自殺の報告があり、投与に当たっては、患者の状態を十分に観察することを追記した。
また、慎重投与の対象として、統合失調症、双極性障害、うつ病などの精神疾患のある患者を加えた。重大な副作用としては、SJS、多形紅斑、血管浮腫なども盛り込んだ。