日本OTC医薬品協会は、OTC薬の新たな役割を検討するために2年前に立ち上げた「OTC医薬品社会貢献プロジェクト」の報告書をまとめ、1日に公表した。プロジェクトでは、生活習慣病に使われる医療用医薬品成分をスイッチOTC化した場合の社会的影響と貢献度を、医療経済学の観点から定量的に検証した。
眼科など領域拡大も考慮
今回のプロジェクトでは、▽軽症生活習慣病でのスイッチOTC化の医療保険財政への貢献▽ACE阻害剤のスイッチOTC化による生活者への貢献▽スイッチされたACE阻害剤に対する生活者の支払意思額――の三つについて、医療経済学・薬剤疫学に基づく分析を行った。
生活習慣病では、「高血圧症、脂質異常症、糖尿病の各疾患と診断され、合併症がなく、単剤の薬物治療を受けている」患者に対象を絞っても、年間約1000億円の医療費がかかると推計。厚生労働省調査で、高血圧症、糖尿病の症状がありながら、治療していない患者はそれぞれ約半数と推計されているとし、「既受診者で1000億円程度、未受診者でも1000億円程度が、軽症生活習慣病に関連する医療費」とした。
ACE阻害剤の分析では、「費用対効果は、スイッチOTC薬群が受診群、被治療群より有意によく、ACE阻害剤のOTC薬への転用は、利便性も踏まえると、国民に十分受け入れられる」との考えを示している。
また報告書では、メーカーの課題として、商品選択に必要な情報提供の必要性を挙げた。具体的方策として、▽禁忌をチェックするための質問票や商品パッケージの説明文の作成▽店頭での提示物の活用▽薬剤師による店頭でのアドバイス提供を支援する各種情報などの整備・提供――などを示した。
小売店(薬剤師)に関しては、薬剤師による店頭でのカウンセリング機能の向上が不可欠とし、「店頭で血圧測定や血液検査を行い、生活者のセルフメディケーションを支援することも、新たな役割となり得る」と指摘した。
さらに業界全体としては、学ぶ意欲が高く、生活習慣病の罹患率が高い中高年層に、「分かりやすいセルフメディケーション情報を発信し、OTC薬を用いた生活習慣病への“新たな対処法”を周知・普及させることが当面の課題」とした。
三輪芳弘会長は、「新販売制度はセルフメディケーションを支援するもの。その成功の鍵となるものの一つに、医療用医薬品成分のスイッチOTC化の拡大がある」と述べ、生活者の健康保持に対する多様なニーズに応える面からも重要だとの考えを提示。「プロジェクトでは、第1弾として生活習慣病を取り上げたが、さらに検証すべき分野は眼科、整形外科、皮膚科など多岐にわたる。引き続き取り組みを進めていきたい」と語った。