エーザイの内藤晴夫社長は4日、都内で開いた記者懇談会で、2013年度に新興国市場の売上シェアを二桁台の11%に引き上げる計画を明らかにした。アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」の米国特許切れの影響は、10~12年度で約1050億円の売上減となる見通しで、これを日本・中国のアジア市場と中東・ロシア・トルコ・ブラジルの新興国市場でカバーし、13年度以降の成長を目指す考えだ。
エーザイは、中期戦略計画「ドラマティック・リープ・プラン(DLP)」の最終年度となる11年度に、売上高1兆円の達成を目指していたが、アリセプトの特許切れ影響が、10~12年度に約1050億円の売上減として直撃。11年度の売上高は約8100億円で着地する見通しとなった。
ただ、内藤氏は、13年度に癌・クリティカルケア領域を、売上比23%に拡大し、ポートフォリオの変革を目指す方針を表明。さらに、新興国市場の売上シェアを11%に引き上げる計画を示し、「13年度には、再び強い成長軌道に入っていく」と自信を語った。特に、急拡大する中国市場に加え、中東・ロシア・トルコ・ブラジルを視野に、新興国市場へ本格進出していく考えを明らかにした。
エーザイの新興国戦略は、各国の社会・経済・医療環境に合わせ、市場価格とは無関係に、低価格の「アフォーダブル・プライシング」を実現し、広く患者に医薬品を供給するというもの。インドに設立したエーザイ・ナレッジセンターを活用し、製造原価を低減させることで、安価な新薬を新興国向けに届ける。
内藤氏は「新興国では、各国で受け入れ可能な価格を実現できるかが大きなカギになる」と強調。既にフィリピンでは、アフォーダブル・プライシング第一号として、慢性B型肝炎治療薬「レボビル」を、既存他社ブランド品の約半額で販売している実例を挙げ、「経済的な要因によって、医薬品アクセスが阻害されている状況に一石を投じていく」と、独自の低価格政策に意欲を示した。
また昨年には、中南米で約1億人が感染の危機に晒されている寄生虫疾患のシャーガス病に対し、非営利団体のDNDi(顧みられない病気ための新薬開発イニシアチブ)と、抗真菌剤「E1224」の臨床開発に関する提携・ライセンス契約を締結。低価格を実現するアフォーダブル・プライシングと共に、官民パートナーシップを進めることで、新興国・発展途上国の顧みられない病気に対するアンメットメディカルニーズに対応していく方針だ。