厚生労働省は20日、2010年度の省全体の目標と、上半期に各局が取り組む事項を明示した組織目標を公表した。保険局では、新設する「医療・介護に関する国民会議(仮称)」の議論を踏まえ、12年度の医療・介護同時改定に向けた検討を進める。医薬食品局は、薬害再発防止のために医薬品行政の見直しに着手。医政局は、画期的新薬開発への研究費の集中投入や治験環境整備の支援策を6月に政府がまとめる新成長戦略への反映などを目指す。
目標は、長妻昭厚労相の指示で策定された。職員の人事評価の参考にする。
省全体については、まず、あるべき省の姿として「生活者の立場に立つ信用される厚労省」を描き、「世界に誇る少子高齢社会の日本モデルを策定し、国民と共有する」を目指すべき目標に掲げた。その上で、政策方針として、[1]ナショナルミニマムの基準の設定と実現[2]ポジティブ・ウェルフェアの推進[3]自助・共助・公助の適切な組み合わせ[4]成長戦略の中核としての社会保障の展開--を位置づけた。
さらに、業務遂行の際に、コスト意識・無駄削減の徹底や、利用者満足度指標の作成にも取り組むこととした。組織力強化の視点として、抜擢人事など前例にとらわれない人事システムの構築、「おごり」の一掃、実態把握や制度・業務改善など、7能力の向上を図ることも示した。
また、個別政策・制度改革の方向として、国民会議の設置や医療メディエーター(対話仲介者)を推進し、医療従事者と患者・家族の対話を促進することや、社会保障による所得再分配機能の強化を図りながら、財源確保の考え方を示すことを明確にした。
一方、各局については、保険局の目標として、社会保障審議会医療保険部会で高額療養費のあり方を5月から議論を開始し、11年度予算案で対応することなどを提示。高齢者医療制度の見直しや、医療と介護の融合的改革のための診療報酬の検討を行うことも盛り込んだ。医療・介護の改革をめぐっては、老健局でも療養病床再編の実態調査を実施し、夏までに結果をまとめ、これをもとに療養病床見直しの方針を固めることとした。
医薬食品局では、「薬害肝炎事件の検証および再発防止のための医薬品行政のあり方検討会」最終提言を公表し、医薬品行政を見直すと共に、医薬品医療機器総合機構と連携した承認審査の迅速化を図る。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の開発要請や、職員に対する薬害に関する講演なども実施する。
医政局は、特定看護師(仮称)制度の導入について、実施可能な医行為の範囲や要件を検討するため、6月までにモデル事業・実態調査に着手し、9月までに実態調査結果をまとめる。また、医療メディエーターの推進に向け、8月までに有識者らから意見聴取して実態を把握する。医薬品・医療機器の研究開発も推進するため、問題点の把握や関係省庁との調整を進めることとしている。