武田薬品は12日、2010~12年までの3カ年中期経営計画を発表した。主力大型製品の2型糖尿病治療薬「アクトス」の米国特許切れを来年に控え、大幅な売上減が見込まれる中、最終年度となる12年度には、売上高1兆3300億円、営業利益2900億円と、09年実績を下回る計画を打ち出した。今中計では、重点疾患に特化したパイプラインの強化や自販地域の拡大によって、持続的成長路線への早期復帰を目指す。都内で開いた中計説明会で、長谷川閑史社長は「アクトス特許切れの影響を最小限に食い止め、中計後の15年度には売上高を10年度水準にまで回復させ、年10%程度の持続的成長につなげていきたい」と方針を語った。
同社は、06~10年度の中期経営計画で、15年度に2兆円を見通せるパイプラインの構築を目指してきたが、達成が難しい状況になっている。こうした中、米国では、後発品メーカーとアクトスに関する特許侵害訴訟の和解契約を進めており、現段階では、アクトス後発品の参入時期を12年8月にまで延期できると想定。得られた期間を有効活用するため、新中計を1年前倒しで策定することになった。
長谷川氏は、「癌や中枢神経領域などのパイプラインを充実させ、後期開発段階にある製品を確実に上市し、売上高の落ち込みのピークを迎える13年度業績への影響を最小限にとどめたい」と述べ、持続的成長路線への早期復帰を目指し、研究開発の生産性向上に積極投資する考えを示した。
特に国内は、日米欧で最も成長が見込める地域として、今後3年間で七つの新製品群を投入し、早期浸透を図る。既存の生活習慣病領域を強固にすると共に、重点疾患の癌・中枢神経領域を強化することで、国内シェア第1位を堅持していく。
さらに、自社販売体制の構築を加速させる。現在、世界市場の84%を自販地域としているが、12年度までに約90%をカバーできる体制を目指す。長谷川氏は、「中長期的な成長を実現するためには、新興国市場に橋頭堡を築く必要がある」とし、インドやロシアに自社拠点を設立する意向を明らかにした。
米子会社で人員削減
一方、コスト構造の改革を進め、人員削減にも着手する。10年度には米国の研究開発職を中心に、グローバルで約10%の人員を削減する計画で、コスト削減効果として、約500億円を見込んでいる。ただ、日本での人員削減は、新製品ラッシュを控えていることもあり、実施しない予定。