米国とスイスの非営利団体「結核治療薬開発のための世界同盟」(TBアライアンス)と「顧みられない病気のための新薬開発イニシアチブ」(DNDi)は、複数の顧みられない病気の新規治療法を開発するため、対価が発生しない初めてのライセンス契約を締結した。TBアライアンスはDNDiに対し、抗結核薬の候補化合物を、顧みられない熱帯病治療薬として開発する権利を無償供与する。非営利の製品開発パートナーシップ(PDP)を構築する団体同士が初めて手を結んだことで、顧みられない病気の治療選択肢を広げる相乗効果が期待されそうだ。
今回の契約により、TBアライアンスは、リーシュマニア病、シャーガス病、アフリカ睡眠病を含めた顧みられない熱帯病に用いる目的で、ニトロイミダゾール系化合物を開発する権利を許諾し、これら化合物の研究から得られた科学的知見などもDNDiと共有することになった。
また、今回の契約対象となるニトロイミダゾール系化合物には、TBアライアンスが開発中の新規結核薬の候補化合物が含まれている。特に最も有望な候補化合物「PA‐824」は、TBアライアンスが米カイロンから権利を取得したもので、現在第II相試験中となっている。
TBアライアンスは、既にニトロイミダゾール系化合物のライブラリーを構築しているが、今回の契約では、DNDiがライブラリーの中から、顧みられない病気の治療に潜在的な効果を示す化合物を、調べることができる協力関係も確立した。
TBアライアンスは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団やオランダ外務省、英国国際開発省などの資金援助を受けて運営している非営利の新薬開発パートナーシップ。これまで世界の公的・民間パートナーとの協力によって、結核治療薬候補の包括的ポートフォリオの開発をリードしており、パイプラインには「PA‐824」をはじめ、10種類以上の化合物を有している。
DNDiは、国境なき医師団を母体に、世界保健機構の熱帯病研究所(WHO/TDR)、フランスのパスツール研究所、ブラジルのオズワルド・クルズ財団、ケニア中央医学研究所、インド医科学評議会、マレーシア保健省によって設立され、顧みられない病気のアフリカ睡眠病、リーシュマニア病、シャーガス病の新薬開発を進めている。既に抗マラリア合剤「ASAQ」「ASMQ」、アフリカ睡眠病治療薬の併用療法「NECT」の3プロジェクトを成功させている。