TOP > HEADLINE NEWS ∨ 

【海外大手製薬企業/10年上半期決算】新興国市場とワクチンで好業績‐事業多角化の効果を反映

2010年08月16日 (月)

 海外大手製薬企業の2010年上半期決算が出揃った。米国勢・欧州勢の各社は、成長著しい新興国市場で大きく売上を伸ばし、軒並み好業績を達成した。大型買収を敢行した米ファイザー、米メルクも、バイオ医薬品と新興国市場を取り込み、統合効果が表れた格好となった。欧州勢は、新型インフルエンザワクチンを供給した仏サノフィ・アベンティス、英グラクソ・スミスクライン、スイス・ノバルティスファーマが、ワクチン事業を急拡大させ、好調な業績を後押しした。各社とも大型製品依存からバイオ医薬品、ワクチン、ジェネリック医薬品等の多角化にシフトし、新興国市場の成長を取り込み、収益構造の大幅な転換によって業績を確保している状況が、明確に示された上半期決算となった。

【米ファイザー】

 米ファイザーは、統合を完了した旧ワイスの製品が加わったことに加え、為替の影響が有利に働き、売上高は前年同期比56%増の340億7700万ドルと大幅に拡大した。

 医療用医薬品のバイオ医薬品部門は、ファイザー製品中心のプライマリー・ケア事業部門が12%増の117億8900万ドル。特に旧ワイスの生物製剤、ワクチンが中心のスペシャリティ・ケア事業部門が152%増の72億9200万ドル、エスタブリッシュ製品事業部門が66%増の55億1400万ドルと買収効果が表れ、売上高は46%増の295億2700万ドルと大幅な増収となった。

 製品別では、主力の高脂血症治療薬「リピトール」が、米国市場の落ち込みを為替の好影響でカバーし、3%増の56億ドルと増収を確保。神経障害性疼痛治療薬「リリカ」が13%増の15億ドルとなった。さらに、旧ワイス製品の抗リウマチ薬「エンブレル」が16億ドル、小児用13価肺炎球菌ワクチン「プレベナー13」が9億ドル、同7価ワクチン「プレベナー7」が9億ドルとなった。

 純利益は、ワイスの買収に伴う統合費用、事業再編費用が膨らみ、10%減の45億0100万ドルと二桁減益となった。

【米メルク】

 シェリング・プラウと統合した米メルクは、主力のアレルギー治療薬「シングレア」が前年同期比5%増の24億2300万ドル、DPP‐4阻害薬「ジャヌビア」が27%増の11億1100万ドル、高脂血症治療薬「ゼチーア」が3%増の10億9800万ドル、新製品のHIVインテグラーゼ阻害剤「アイセントレス」が56%増の4億9900万ドルと大きく伸長。アニマルヘルスも二桁の伸びを示し、合算売上高は2%増の227億6800万ドルとなった。

 純利益は、統合事業再構築計画などの関連費用が嵩み、65%減の10億5100万ドルとなった。

【英グラクソ・スミスクライン】

 英グラクソ・スミスクラインは、米国市場の落ち込みを、新興国市場と新型インフルエンザ関連製品の需要増でカバーし、売上高は7%増の143億8200万ポンドとなった。

 医療用医薬品部門は、主力の気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「セレタイド/アドエア」が4%増の25億5000万ポンド、新製品の抗癌剤「タイケルブ」が1億0900万ポンドとなったが、安全性の問題が懸念されている糖尿病治療薬「アバンディア」は18%減の3億2100万ポンドと続落した。

 特にワクチンは、米FDAから一時使用中止の勧告を受けた影響で、小児用ロタウイルスワクチン「ロタリックス」が19%減と二桁の落ち込みを見せたが、新型インフルエンザワクチンの急伸でカバー。新製品の子宮頸癌予防ワクチン「サーバリックス」も4%増と好調に推移し、ワクチン全体で70%増の23億5000万ポンドと大幅な売上増となった。

 ただ、新型インフルエンザ関連製品の需要増の影響を除くと、1%の成長にとどまった。

【仏サノフィ・アベンティス】

 仏サノフィ・アベンティスは、糖尿病領域のインスリンアナログ製剤「ランタス」「アピドラ」と、新興国市場の成長が牽引し、売上高は前年同期比4・3%増の151億6800万ユーロとなった。

 医薬品事業の売上高は、欧州で後発品の攻勢を受けた抗血小板剤「プラビックス」が24・3%減と大幅に落ち込んだが、糖尿病領域の「ランタス」が10・5%増、「アピドラ」が24・2%増と二桁の伸びでカバー。特に新興国では、買収効果でコンシューマーヘルスケア事業、ジェネリック医薬品事業が大幅に伸長し、0・1%減の134億7600万ユーロと横ばいにとどまった。

 ワクチン事業は、新型インフルエンザの流行に伴う需要増を受け、インフルエンザワクチンが急伸し、25・5%増の16億9200万ユーロとなった。

 その結果、利益面では、営業利益が5・9%増の67億2300万ユーロ、純利益が8・6%増の49億0500万ユーロと増益を確保した。

【スイス・ノバルティスファーマ】

 スイス・ノバルティスファーマは、主力品が好調な医薬品事業に加え、ワクチン・診断技術関連事業、後発品事業のサンドが大きく伸長し、売上高は前年同期比18%増の238億4700万ドルと二桁成長を達成した。

 医薬品事業は、主力の慢性骨髄性白血病治療薬「グリベック」が12%増、骨転移治療薬「ゾメタ」が7%増、乳癌治療薬「フェマーラ」が14%増と、癌領域製品が好調に推移。新製品の加齢黄斑変性症治療薬「ルセンティス」も42%増と売上を伸ばし、10%増の150億ドルとなった。

 ワクチン・診断技術関連事業は、新型インフルエンザワクチンの出荷増が大きく寄与し、約4倍増の19億ドルと急伸。後発品事業のサンドは、中東欧、アジア、中東・トルコ・アフリカなど新興国市場の成長や、バイオ後続品の好調によって、価格低下の影響をカバーし、14%増の40億ドルとなった。

 その結果、営業利益は37%増の65億ドル、純利益は34%増の54億ドルと大幅な増益となった。

【スイス・ロシュ】

 スイスのロシュは、新型インフルエンザ流行に伴う需要増の反動で、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」が大幅に減少したものの、癌領域製品が好調に推移し、売上高は3%増の246億3600万スイスフラン(CHF)となった。

 医療用医薬品は、「タミフル」が31%減の7億1000万CHFと大幅に落ち込んだが、血管新生阻害剤「アバスチン」が14%増の33億9300万CHF、悪性リンパ腫治療薬「リツキサン」が9%増の33億0100万CHF、転移性乳癌治療薬「ハーセプチン」が8%増の28億0600万CHFと、主力の抗癌剤でカバーし、1%増の193億8600万CHFと増収を確保した。

 利益面では、前年同期に米ジェネンテックの統合費用を計上した影響で、純利益は37%増の55億6500万CHFと大幅な増益となった。

【英アストラゼネカ】

 英アストラゼネカは、主力品が新興国市場を中心に伸長し、売上高は7%増の167億5400万ドルとなった。

 製品別では、主力の高脂血症治療薬「クレストール」が北米、西欧、カナダ、日本、オーストラリアと全世界で高成長を維持し、25%増の27億3000万ドルと大幅に売上を伸ばした。統合失調症治療薬「セロクエル」は、徐放製剤の浸透によって10%増の26億5900万ドル、抗潰瘍薬「ネキシム」は米国の落ち込みをカナダでカバーし、1%増の24億9600万ドルと増収を確保した。また、気管支喘息治療薬「シムビコート」は、米国市場の急伸、日本での上市を追い風に24%増の13億6500万ドルと好調を維持した。

 その結果、営業利益は8%増の66億7700万ドル、純利益は19%増の48億8400万ドルと増益となった。

【米J&J】

 米ジョンソン・エンド・ジョンソンの医療用医薬品部門は、主力の抗リウマチ薬「レミケード」が9%増の23億1600万ドルと続伸。新製品の多発性骨髄腫治療薬「ベルケード」が30%増、抗HIV薬「プリジスタ」が49%増、統合失調症治療薬「インベガ」が11%増と売上を伸ばした。

 さらに、新発売した乾癬治療薬「ステララ」、関節リウマチ治療薬「シンポニ」の生物製剤も好発進したが、後発品の影響を受けた抗精神病薬「リスパダール」が50%減、片頭痛治療薬「トパマックス」が60%減と大幅に落ち込み、売上高は0・8%減の111億9100万ドルと減収となった。

【米イーライリリー】

 米イーライリリーは、主力品が米国市場で売上を牽引し、抗精神病薬「ジプレキサ」が7%増、大うつ病治療薬「サインバルタ」が15%増、抗癌剤「アリムタ」が50%増、勃起障害治療薬「シリアス」が14%増と二桁成長。超速効型インスリン製剤「ヒューマログ」も9%増と好調で、売上高は8%増の112億3400万ドルとなった。

【米ブリストル・マイヤーズ・スクイブ】

 米ブリストル・マイヤーズ・スクイブは、主力品が軒並み二桁の伸びを示し、売上高は7%増の95億7500万ドルとなった。

 主力の抗血小板薬「プラビックス」が11%増の32億9300万ドル、C型肝炎治療薬「バラクルード」が33%増の4億3900万ドルと成長を牽引。大塚製薬と販売契約を延長した抗精神病薬「エビリファイ」が1%増にとどまったが、抗HIV薬「レイアタッツ」が12%増、新製品の抗リウマチ薬「オレンシア」が28%増、抗癌剤「スプリセル」が35%増と大幅に売上を伸ばし、新発売したDPP‐4阻害薬「オングリザ」も3800万ドルと好調なスタートを切った。



‐AD‐

同じカテゴリーの新着記事

薬剤師 求人・薬剤師 転職・薬剤師 募集はグッピー
HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術