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【日本に根付くかMSL】専門職が公正な情報提供‐問われるMR活動のあり方

2010年8月18日 (水)

 製薬企業において、営業・マーケティング組織から独立し、医学的・科学的に公正な情報提供を支援するメディカル・サイエンティフック・リエゾン(MSL)の役割が注目され始めている。自社製品の情報提供活動は、営業を担当するMRの役割だが、欧米と違い日本では、製造販売後調査、文献提供にまで関与する特有のMR活動が行われてきた。特に最近、医薬品に関するエビデンスと安全性重視の傾向が強まる中、「MRは自社製品に有利な情報だけを宣伝しているのではないか」と、バイアスへの懸念が高まっている現状がある。既に最大市場の米国では、営業社員の削減が進められ、従来型のMR活動は転換期を迎えている。適切な製品情報の提供とは何か。プロモーションと高度な学術情報の分離に向けたMSLの導入は、日本でのMR活動のあり方を問うきっかけとなりそうだ。

 MSLは、営業・マーケティング組織から独立した“ノンプロモーショナル”な職種として、安全性等を担うメディカル部門に所属する。医学的・科学的に高度な専門性を持ち、各疾患領域の専門医であるキーオピニオンリーダー(KOL)などを訪問し、直接的な議論を通じて、医師と良好な関係を構築・支援することが大きな役割となる。自社製品の宣伝は一切行わず、プロモーションと混同しないよう、明確に区別しているのが特徴と言える。

 MSLの重要性が高まっている背景には、医薬品を取り巻く社会的な環境変化がある。新薬の種類、作用機序、使用方法が多様化し、多くの医師はエビデンスに基づいたデータを重視し始めている。安全性に対する注目度、企業のコンプライアンス意識の高まりも、質の高い情報提供を行うMSLの必要性を後押ししている。これまで医師にとって、MRの情報提供は「自社製品に有利な情報に偏っているのではないか」と、バイアスへの懸念が拭えなかったのも事実だが、もはやMRの情報提供だけでは、対応が不十分な時代と考えられている。

 実際のMSLに必要な要素は、医学・薬学に関連する博士、修士等の学位取得者が望ましいとされ、製薬産業での経験、医学論文を理解できる英語力、外部対応に必要な対人能力、社交性も要求されている。既に欧米では、確立された機能として、数千人のMSLが存在すると言われ、医学・薬学等の博士レベルを持つ人材が多く活躍しているようだ。ほとんどのMSLは、製薬企業でメディカルアフェアーズ部門に所属し、営業・マーケティングから独立した研究・教育関連の業務を担っている。

 現在のMSLの中心的機能としては、KOL対応と臨床研究支援が挙げられる。新薬開発の早期段階では、治験薬に関わる疾患領域のエキスパートであるKOLと関係を構築。最新の医学情報を正確、タイムリーに提供すると共に、開発部門との情報共有、臨床試験の施設紹介など、社内関連部門への支援を中心に行う。開発後期から市販後にかけては、KOLを増やすことで、より多くの医師へのアクセス拡大を目指すと共に、社内外での教育を計画、実施する。さらに市販後には、医師の自主臨床研究支援が重要な業務となるなど、新薬開発の早期段階から市販後まで、幅広い役割が期待されている。

 ただ、社内的に営業・マーケティング組織から独立した職種とはいえ、医師から見るとMRとMSLの違いは分かりにくいのも事実。特に日本では、製造販売後調査にまで関わる特有のMR機能、医師と製薬企業の関係、独特の商習慣など、こうした歴史的な背景がMSLの確立に大きな障害となることが予想される。

 実際、国内の外資系製薬企業を中心に、MSLを構築する動きが見られているものの、まだ黎明期にある状況で、MSLの確立に当たっては、現行のMR活動の見直しなど、多くの壁を乗り越えなければならない。ただ、製薬企業の売上を支えるMR活動のあり方を変えるのは容易なことではなく、プロモーションを担うMRの役割、科学的に高度な情報提供を担うMSLの役割をいかに区別し、どう新たな職種を日本に根付かせていくのか。まずはMSLの導入を含めた議論を深めていく必要があるだろう。




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