全国自治体病院協議会(邉見公雄会長)は、希望する会員が、同じ値段で医薬品を調達できる新たな取り組みを、来年度から実施すると発表した。価格交渉力を補って医薬品の仕入れ額を抑え、赤字にあえぐ自治体病院の経営改善を目指す。今年度中に30~50品目を選定し、来年6月頃には目安となる金額を示し、参加医療機関を募って事業を開始する予定だ。現段階では共同購入、共同入札、価格交渉の一括化など、手法は流動的で、今後、内部の検討会で詰めていく。
医薬品の共同調達は、国立病院機構で8割の施設が黒字化した原動力とされており、日赤などでも展開されている。全自病では現在、会員病院が任意で仕入れ価格を登録して、自院の値引率の水準を推し量ることができる「医薬品ベンチマーク分析システム」を運用している。それによると、輸送費の影響とは無関係の地域格差が見られており、同一県内でも値引率が違う事例があるという。
そのため、これまでは参考値を示すにとどまっていた同システムを活用し、蓄積した580品目の中から、病院の規模にかかわらず、高額な品目などを絞り込み、参加病院が同一価格で調達する仕組みを導入することになった。薬価改定がなく、価格を把握しやすいことも、来年度から着手する上で都合がいいとしている。
ただ、独占禁止法との関係もあり、肝心な具体的枠組みは固まっていない。国立病院機構や日赤などは、単一の組織体であるため支障はないが、自治体病院はあくまで各地方公共団体に属する医療機関で、事情が異なるためだ。
全自病の担当者は、「独占禁止法に違反するかはグレーゾーン。やり方によって判断が異なる」と話し、購入そのものを共同で行う場合には、新組織を立ち上げなければならない可能性があるほか、会員病院全体で約4000億円ある薬剤費の、どの程度までを範囲に含めるかも影響するという。また、「まずは可能性のあるところからやっていく」としており、当初の規模は小さくなるものと見られる。