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理化学研究所の分子イメージング研究拠点が、18日から本格稼働した。医療関連研究・産業機関が集積する神戸市のポートアイランドの一角に昨年9月に完成した「神戸MIR&Dセンター」に入居し、40人以上のスタッフを擁している。創薬プロセスの迅速化や低コスト化の実現に向けて、マイクロドーズ試験や標的受容体占有率の測定などに活用できる分子イメージングの基盤技術確立を目指していく。
同拠点は、文部科学省のプロジェクトの一環として設置されたもので、創薬候補物質探索拠点と位置づけられている。
分子イメージングは、生きた状態のまま生体内の蛋白質や受容体、トランスポーターなど、様々な分子の局在や体内動態を観察する技術。標的部位に集積、結合するプローブに放射性同位元素を組み込み、プローブが発する微量の放射線をPETなどで捕らえることで、それを実現するものだ。新薬の開発や、疾病の早期発見、治療効果の判定などに役立つとされている。
2005年度から始まった文科省の分子イメージング研究プログラムでは、東西で二つの研究拠点が選定された。西の拠点が、今回本稼働した理研の研究施設だ。東の拠点として選定された放射線医学総合研究所は「PET疾患診断研究拠点」として、▽高度な腫瘍診断を可能にする手法の開発▽脳機能の解明やアルツハイマー病など精神・神経疾患の診断法の開発――などを手がける。
理研の研究施設には、放射性同位元素を生成するサイクロトロン2基、プローブを創製する自動合成装置11台(予定)、動物用PET装置2台などが設置される。これらの充実した設備を活用すれば、大学などのPET研究機関に比べ、10倍の研究効率が得られるという。
40人以上のスタッフが、[1]新規プローブの設計や合成を行う「分子プローブ設計創薬研究チーム」[2]動物モデルを使って生体内の分子動態を調べる「分子プローブ機能評価研究チーム」[3]PET技術の高度化や薬物活性解析などを行う「分子プローブ動態応用研究チーム」――の3チームに分かれて研究を推進する。