大麻事件の検挙者数が年々増加し、大麻乱用は中高生にまで蔓延しはじめている。昨年1年間の大麻での検挙者数は対前の年比6・3%増の2931人で、検挙者数の6割以上を10代、20代の若者が占めている。
実際、大学生への大麻に関する意識調査でも、大麻が身近な存在として迫ってきていることを如実に物語っている。その一例として今年4月、関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学の4大学が全新入生を対象に実施した薬物に関する意識調査では、回答した2万0088人の約64%が「大麻は入手可能」としており、その数は同じ調査を行った昨年度から倍増している。
手に入ると考えた理由は、「報道などを見れば簡単と思う」が約52%、「簡単に入手できると聞いたことがある」が約38%、「インターネットでの販売を見かけた」が約4%となっている。
大麻の使用については90%以上が「使うべきではない」、約5%が「個人の自由」としており、誘われた場合でも90%以上が「断る」、約6%が「断らないかもしれない」と回答している。
警察庁では、若者を中心に大麻乱用者が増加している要因と、「種子や栽培用具がネットで簡単に購入できることがその背景にある」と分析している。
大麻乱用は、覚せい剤や合成麻薬乱用への入り口となるため、「大麻乱用防止が、薬物乱用を根絶するための大きなキーポイントになる」と指摘する声が多数を占める。
では、大麻乱用を未然防止するにはどのような対策が考えられるか。京都府薬務課では、5年前から「違法ドラッグ・健康食品対策事業」の一環として、警察OBを活用したネット監視を実施している。来年度からは監視項目の中に、「大麻や栽培用具販売」を盛り込むことを計画しており、その成果が注目される。
とはいえ、「大麻取り引きは、何度もメール交換して、提供者との信頼関係が構築されない限り絶対にできない」といわれている。販売サイトを発見するのは容易ではないが、専門家の地道な努力を期待した。
また、保護者に対し、不正な情報にアクセスさせない、フィルタリングシステムの有効性の周知徹底も必要だ。
その一方で、大麻乱用を防止するための、青少年への根本的な啓発活動が、不可欠なことはいうまでもない。中学・高校の「くすり教育」の中で、体育教員や養護教員、学校薬剤師が大麻乱用、ひいては薬物乱用防止の重要性を、しっかりと生徒に意識づける必要があるだろう。
学校薬剤師による小学校での「くすり教育」の開催や、大学等が薬物乱用防止防止対策に取り組む学内組織を設置することも重要だ。
大阪府薬剤師会では9月から、よしもとと連携して、青少年向けの「大麻撲滅キャンペーン」を展開しているが、その訴求力は群を抜いていると聞く。お笑いタレント起用の是非はともかく、青少年の目線に立った啓発活動という点では高い評価をしてもよいと思う。財政難の中で、地方自治体による啓発活動等の予算が付き難い昨今、製薬企業もCSRの一環として、「薬物乱用防止活動」に目を向ける必要があるだろう。
関係機関や薬剤師、製薬企業が連携した青少年への総合的な大麻乱用防止策の展開を期待したい。