厚生科学審議会感染症分科会感染症部会の「エイズ・性感染症ワーキンググループ(WG)」に設置された「エイズ予防指針作業班」は26日、初会合を開き、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)の改正に向けた議論を開始した。
エイズ予防指針は、少なくとも5年ごとに再検討し、必要に応じて変更することになっている。前回は、2006年3月に改正しており、今年は見直しの時期に当たる。昨年12月に開いたWGでは、新たに作業班を設置し、指針の見直しを進めることを確認していた。
厚労省が提示した「見直しの視点」では、感染者・患者数が07年に初めて年間1500件を超過、累積でも1万5000件を突破したほか、新規感染者の増加率も依然として上昇傾向にあるとの現状を指摘している。
また、00年以降は、地方大都市でも増加しており、この5年間で20歳代が全体の約25%、30歳代が約40%を占め、比較的若い世代を中心に感染拡大が進んでいること、感染経路別では、性交渉による感染がほとんどで、特に男性同性間の性的接触が、全体の約6割を占めているなど、最近の感染事例の傾向も示した。
こうした実情を踏まえ、新たな施策を検討する際の課題として、▽HIV検査経験なしでエイズと告知されるケースへの対応▽男性同性愛者の予防行動▽HIV治療の長期化に伴う諸問題▽各ブロックの現状に応じた医療提供体制構築▽薬害被害者に対する恒久対策の推進――を挙げた。
また、厚労省が提示した、エイズ施策評価総括報告書(06~09年度)案では、即日検査や、休日・夜間検査などの利便性の高い保健所の必要性、検査相談の導入、郵送検査の普及、侵襲性が低くく安全性が高い唾液検査の導入の必要性なども課題として挙げている。
大規模病院などが行う、院内感染対策のための入院・手術前検査を、HIV感染者の早期診断にどう役立てるかを検討することも求めている。
作業班は、月2回程度のペースで会合を開き、予防指針の見直しに関する報告書を作成し、WGに報告する。WGは、感染症分科会感染症部会に審議結果を報告し、部会での審議を踏まえ、必要に応じて指針の改正が行われる。