マイラン製薬の新社長に就任した本田明彦氏は、本紙のインタビューに応じ、「圧倒的な低コストのポジションを確立し、独自の後発品ビジネスモデルを完成させることで、日本のリーダーを目指したい」との考えを示した。2008年2月の新生マイラン発足後に着手した、事業再構築も完了したことから、本田氏は「いよいよスタートラインに立ち、“跳躍板”を蹴って大きく飛び上がる変曲点を迎えた。今年からエンジンをフル回転し、日本市場で高いレベルの二桁成長を示し、5年以内に国内シェア3位を取ることが至上命題」と方向性を語った。
マイラン製薬は、前身の旧メルク製薬が強みとする癌、感染症領域に加え、市場拡大が見込まれる中枢神経系、皮膚・アレルギー疾患、生活習慣病の5領域に特化し、ジェネリック事業を展開する。また、医療上重要な局方品も手がけ、先発品と後発品の両方を事業の柱と位置づけてきた。
本田氏は「基本的に局方品の売上は維持し、後発品を大きく伸ばしていきたい」と方針を語る。そのために、顧客からの信頼を最大の鍵と位置づけ、低コスト・高品質・安定供給の確保に最注力したい考え。米マイランは、創業以来50年にわたって品質関連のリコールがゼロという実績があり、日本でもグローバル水準の高品質を目指す。
ただ、海外に比べて日本は、原薬輸入等に関する規制要件が違い、後発品に対する国民意識も違う。本田氏は「コスト、品質、安定供給の3要素だけでは、トップシェアを取れない」と見る。特にDPC病院に対し、後発品への変更が利益に貢献するという、経営者の立場でメリットを訴える説明や、情報提供活動が必要だとしている。
また、注目されるバイオ後続品への対応については、「われわれが一番強みのある分野に絞り、選択と集中で考えていく。米本社でも、提携先であるインド・バイオコン製品の導入を検討している段階にあり、日本でも年内には、何らかのメドがつくのではないか」との見通しを示す。バイオ後続品の国内展開に当たっては、「当然、バイオコン以外の他社とのパートナーシップは可能性に入ってくる」とも述べた。
M&Aを含めた提携の可能性については、「全方位で考えたい。ポートフォリオという物差しの中で、ベストの選択ならば積極的に出て行く」と、前向きな姿勢を示している。
さらに、ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境にも言及。「追い風を受けながら、思ったほど伸びていないのは、企業が期待されているコスト体質を、実現できていないからだと思う」と指摘。「コストで最優位に立てなければ勝ち残れない。マイランが日本で最も低コストのポジションを確保するため、あらゆる取り組みを行いたい」と話している。その上で、圧倒的な低コスト・品質・安定供給を実現する、独自の新しいビジネスモデルを完成させ、業界のリーダーとして、5年以内に国内トップ3入りを目指す方針を明らかにした。
新社長に就任し、「事業再構築もほとんど終え、もう跳躍板は蹴った」と、不退転の決意を語る本田氏。「今年は高いレベルの二桁成長を実現し、何らかの変曲点にしなければ鼎の軽重が問われる」と、自らにプレッシャーをかける。