
中村会長
日本CRO協会は23日、2010年の年次業績を発表した。総売上高は、前年比0・2%増と横ばいにとどまり、成長率の鈍化傾向がさらに加速し、踊り場状態を迎えたことが鮮明になった。売上高の内訳を見ると、医薬品業務は増加したものの、受注プロジェクト数が減少。さらにCRO同士で加速する統廃合、上半期の受注低迷が直撃し、低成長時代が一気に押し寄せた格好となった。
10年の会員総売上高は、1132億2200万円。売上高の領域別割合では、大部分を占める医薬品が86・4%(12%増)と増加したが、非臨床は8・0%、その他(セントラルラボ、システム構築、臨床研究など)は4・1%と前年並みとなった。
業務別の割合では、モニタリング業務が53・2%と減少傾向が続き、昨年好調だったDM・統計解析も22・5%と減少に転じた。ただ、その他(治験臨床集中検査業務、生物学的同等性試験、医師主導臨床研究など)は19・5%と増加した。
こうした傾向は、プロジェクト受注数にも反映されており、モニタリングの割合が13・5%(20%減)、DM・統計解析の割合が34・4%(8%減)と落ち込んだが、その他の割合は33・6%に増加し、CRO業務の多様化を反映している実態が浮かび上がった。
モニタリング業務の動向を詳しく見ると、受注プロジェクト数は約20%減少したものの、売上高は約3%減にとどまったことから、同協会は「プロジェクトの大型化傾向が進んでいる」と分析した。
また、今回初めて医薬品関連モニタリングプロジェクトの疾患領域別内訳が公表された。最も多かったのが癌、次いで中枢神経系、代謝、循環器との結果で、製薬企業の開発トレンドを反映していることがうかがえた。プロジェクト総数のうち、グローバル試験の割合は12・9%、EDC使用率は37・6%だった。
10年は、CRO同士の相次ぐ統廃合によって、会員数が35社から28社に減少。09年の成長率10・1%に対し、0・2%増と成長に急ブレーキがかかったが、同協会は「10年は明らかに踊り場であり、統廃合に加え、上半期の受注低迷が影響したが、下半期は回復基調にある」との見方を示している。
11年の総売上高は、6%増の1200億円を予測し、一桁成長を確保する見通し。
中村会長「市場の景色変わる」‐アンメットに成長余地
同日、都内で開いた業績報告会で、中村和男会長(シミック代表取締役会長兼社長)は、「バイオ医薬品を含め、どれだけアンメットニーズの高い新薬が増えてくるかがカギになる」と、国内CRO市場の方向性に言及。「リーマンショックの影響を受けた欧米市場に比べると、国内のアウトソーシング率は上がっており、11年には市場環境は回復してくる」との見方を示した。
その上で、「CROの受託業務がオーファンドラッグ、バイオ医薬品など、開発が難しい新薬やグローバル試験、アジア試験に内容が変わってくる。今後、こうした品目が増え、アウトソーシング率が上がってくれば、まだ成長の余地はあるだろう」と予測した。