中央社会保険医療協議会は20日、委員任期を満了した遠藤久夫会長の後任に、東京大学大学院教授の森田朗委員を新会長に選任した。
森田氏は、2009年6月から公益委員として中医協に参加。専門は行政学。今後の医療について、「持続可能な形で維持発展させることを目指す」とあいさつした。また、会議の運営方針として、引き続き根拠に基づく論理的な主張を委員に求めると共に、「熟議も必要だが、時間も貴重な資源」とし、時間への配慮を要請した。最近の中医協は、予定の時間を大幅に超過することが多かった。
遠藤氏は、汚職事件を受け、中医協改革が行われていた05年4月に委員に就任した。この日の退任のあいさつでは、在任中に中医協の権限が診療報酬の配分に限られたことなどに触れ、「中医協にとっても大きな変革があった」と振り返った。
ただ、財源制約の中で個別点数を決めざるを得なくなったことで、「機能はむしろ高まった」と指摘。改定結果検証部会と診療報酬調査専門組織の5分科会を挙げ、「このような調査機能を持った審議会は、ほかには見られない。ますます合理的な議論をしてほしい」と述べた。
さらに、「今後は、医療の費用対効果の議論をする必要がある」と宿題を残した。イギリスの公的保険で医療サービスの経済性を評価する機関「NICE:National Institutef o r H e a l t h a n d C l i n i c a lExcellence)」を例示し、「ここまでドラスティックではないとしても、価格付けに反映させる必要がある」と説明。かつては3割近かった薬剤費比率が下げ止まり、最近では上昇していることや、抗癌剤をはじめとする高額な薬剤が増えている現状を踏まえ、「費用対効果の議論は、世界の流れから見てもおかしな話ではない」と述べた。
なお、患者の立場で支払側から参加していた勝村久司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が、この日の会合を最後に退任となった。