
佐藤製薬は、イミダゾール系抗真菌剤「クロトリマゾール」を有効成分とする、膣カンジダの再発治療薬「エンペシドL」(第1類医薬品)を、10日から新発売した。クロトリマゾールをOTC医薬品に配合したのは初めて。同社では、主力のOTC薬事業に関して、「スイッチOTC薬、特に第1類医薬品の開発に積極的に取り組んでいく」(佐藤誠一社長)としており、昨年12月に点鼻薬「ナザールAR(季節性アレルギー専用)」、今年4月に点鼻薬「ナシビンMスプレー」(いずれも第1類)を投入。今回の新製品を加えて、同社の第1類医薬品は8品目となった。
「エンペシドL」は、医療用の「エンペシド膣錠100mg」をOTC薬にスイッチした製剤。「エンペシド膣錠100mg」は独バイエルで開発され、世界30カ国以上で発売されている。日本では、医療用として1976年に発売されて以来、カンジダに起因する膣炎および外陰膣炎の適応で使用されている。また、OTC薬としてのクロトリマゾール配合膣錠は、90年にアメリカで最初に承認を得て、現在ではイギリス、オーストラリアなどの主要国で販売されている。
膣カンジダは、女性生殖器感染症の中でも頻繁に見られる疾患で、膣に常在しているカンジダ菌が異常増殖することで発症する。クロトリマゾールは、真菌細胞膜に直接作用して殺菌するほか、真菌細胞膜の構造・機能の維持に重要なエルゴステロールの合成を阻害することで、抗菌活性を発揮する。抗菌スペクトルは病原真菌のほとんどに及んでおり、膣カンジダの原因菌種として最も多いカンジダ・アルビカンスに、高い抗菌活性を示す。
「エンペシドL」は、医療用の「エンペシド膣錠100mg」と同一製剤で、1日量1錠中にクロトリマゾール100mgを含有する。膣内の水分で崩壊する発泡性のある錠剤のため、有効成分が膣内の隅々まで広がり、患部に効果的に作用する。
無臭・無着色の錠剤で、油脂性基剤を使用しておらず、夏場でも融解することがないので、下着などを着色する心配がない。
効能は「膣カンジダの再発」で、販売対象は過去に医師の診断・治療を受けた人に限る。成人(15歳以上60歳未満)1日1回1錠(できれば就寝前)を膣深部に挿入し、6日間続けて使用する。税込み希望小売価格は、6錠入り2940円。
膣カンジダは、膣・外陰部の痒み、白色で酒粕状・ヨーグルト状のおりものなど、特徴的な症状を示すことから、再発の場合の自己診断が可能な疾患といえる。バイエル薬品が発症経験のある995人に、「再発した場合に同品を購入したいか」を聞いたところ、約7割が購入意向を示し、理由として「病院へ行かなくてもよいから」が、6割を上回った。
市販薬への高い購入意向が示されたことと、医療用と同ブランド名での販売ということから、「エンペシドL」の需要の高さが期待される。
佐藤製薬では、薬剤師向けに情報提供ツールの充実と製品説明会の開催、生活者に向けては専用Webサイトを開設するなど、情報発信と販売促進を図っていく。