厚生労働省は20日、東日本大震災による医薬品の製造不足を補うため、緊急輸入品の規格追加や類似薬への代替に伴う処方変更など、4成分6品目を薬価基準に早期承認した。また、田辺三菱製薬の「メインテート」(一般名:フマル酸ビソプロロール)について、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を通じて慢性心不全の適応追加が公知承認されたことを受け、初回投与用の0・625mg製剤の規格追加も同日付で収載した。
災害対応で薬価収載を早期化するのは異例。メーカーと同省医政局経済課が相談して、安定供給を維持するために必要と判断した。本来なら後発品の定期収載(震災を考慮して通常より1カ月遅い6月に予定)に合わせて収載することになるが、1カ月前倒した。薬事も迅速審査で承認を急いだ。
震災対応品目
▽セベラマー塩酸塩錠400mg「G」、同800mg「G」(中外製薬)=塩酸セベラマーを有効成分とするリン吸着剤。生産委託先の工場が被災してレナジェル錠250mgが供給困難になったため、ジェンザイムから緊急輸入した別規格を一般名で追加した。薬価は規格間調整で400mgが39・00円、800mgが57・30円。
▽ツインラインNF配合経腸用液(イーエヌ大塚製薬)=経腸成分栄養剤(消化態)で、“NF”は「new―formula(新規格)」の略。アボットジャパンと明治が販売するエンシュア・リキッド、エンシュア・Hの缶入り製剤が、容器工場の被災で供給が逼迫したことを受けた代替品。既存品はビタミンKを多く含み、ワルファリンの作用を減弱することがある。そのため、ワルファリン投与患者でも使いやすいよう、ビタミンKを減量した製剤へ処方変更した。薬価は既存製剤と同じ9・60円。
▽ラコールNF配合経腸用液(イーエヌ大塚製薬)=経腸成分栄養剤(半消化態)。ツインラインと同様の処方変更。薬価は既存製剤と同じ9・10円。
▽ハーセプチン注射用60、同150(中外製薬)=トラスツズマブ(遺伝子組み換え)を有効成分とする抗癌剤。ブドウ糖液で希釈すると濁るため、既存品には希釈液として生理食塩水250mgを添付していた。今回は、希釈方法が定着していることを踏まえ、被災による製造ラインの移転に伴って、生産工程や冷所保存スペースを効率化した生食を付けない規格を追加した。薬価は既存品から生食分を差し引き、60mgが2万3885円、150mgが5万6003円。