共和薬品工業の社長に6月に就任した角田礼昭氏は、本紙の取材に応じ、「国内ジェネリック医薬品(GE薬)メーカーの中で、最も収益性の高い企業になりたい」と抱負を語った。現在でも利益率は高い方だが、さらに売上高に占める税引前利益の割合を、25%にまで引き上げたいという。得た利益を再投資に回し、成長を図る。自社の伸びに加え、他社との提携も積極的に活用したい考えだ。
「規模で勝負すると消耗戦になるし、価格競争にもなってしまう」。角田氏はそう話し、利益率に焦点を当てた経営戦略を構築する考えを示した。同社はインドのルピン傘下で、2011年3月期の売上高は約115億円。国内GE薬メーカーの中堅クラスに位置している。売上増も必要だが、再投資に十分な資金を回すため、利益をしっかり確保することが重要という。
確保した利益は、人材への再投資に使うほか、製造設備に投資して高品質・安定製造体制を充実させる。売上高に占める研究開発費の割合は以前から高く、今後もその姿勢を保ち、パイプラインを拡充させる。
利益率の目標は、世界的に優良とされる企業の数値を参考にした。「あえて高い目標を設定した。先にそこを決めてしまうと、発想を変えざるを得ない。売上高、製造原価、流通のあり方など、従来のやり方を全て変えないと達成できない」とする。
利益率は実際に、07年にインドのGE薬メーカー、ルピンの買収を受け入れ子会社になって以降、急激に改善している。「現状でもおそらく業界でかなり上位に入っている。その延長ということで不可能ではない」と強調。3~5年後をメドに目標を達成したい考えだ。
製造原価の低減には、高品質で安価な原材料を、グローバルに調達できるルピンの力を活用する計画。製造コストの削減は、兵庫県にある三田工場の生産性を高めるほか、インドへの製造移管を並行して進め、実現する。
販売面では、強みのある精神科領域を、「さらに徹底して深掘りする」。精神科病院を対象とした活動を引き続き強めるほか、「これからは、最近急激に増えている精神科系クリニックにも対象を広げたい」と語る。
GE薬の使用頻度が高いDPC病院の開拓にも、さらに力を入れる。「そのためには、注射剤などわれわれが持っていない製品が必要になる」とし、他社からの製品導入や販売提携などを、積極的に進めていきたい考えだ。
販売提携は、販売管理費のコスト低減にもつながるという。各GE薬メーカーはMR数を増やしているが、「MRの増員は必ずしも将来の競争に勝つことにはつながらない。先発医薬品メーカーと同じコスト構造になってしまうと、コスト競争力を維持できない。自社MRはある程度までは増やすが、先発医薬品メーカーと同じ発想はあり得ない。大きな営業部隊を置くのではなく、提携戦略が勝負の分かれ目になる」と、角田氏は話す。
これから先、国内GE薬市場では、内資、外資のGE薬メーカー各社が、いくつかのグループに収斂されると角田氏は見通している。「資本関係ができれば絆は強くなるが、資本関係はなくても、ゆるい連合でもかまわない。そこで徐々に色分けされ、いくつかのグループに別れていくと思う。その中の一つの核になりたい」という。
「戦略的なM&Aは相手があることで、こちらで計算できることではない。ただ、市場はどんどん変化し、M&Aは加速すると思う。Win‐Winの関係になれるパートナーが出てくることも十分あり得る」と話す。
角田氏の前職は、透析用ダイアライザーの製造販売などを手がける世界的な企業「フレゼニウスメディカルケア」の日本のグループ会社社長。04年から今年4月まで指揮を執り、6月に共和薬品の社長に就いた。