創薬支援ベンチャーのトランスパレントは、世界最大級となる患者由来の癌細胞バンクを保有する米モレキュラーレスポンス社と提携し、新たな癌細胞培養システムの商業化に着手した。同社が開発した3次元細胞培養プレート「セルエイブル」を用いて共同研究を進める。年内には、より生体に近い状態で癌細胞を培養できる、次世代型システムの商品化を目指す。
トランスパレントは、世界で初めて生体外でヒト肝細胞の3次元培養を実現した特殊プレートを開発し、2008年5月から製薬企業向けに販売してきた。これまで新規候補化合物の毒性・代謝等の評価系ツールとして、世界50社(施設)以上の製薬企業、大学等の研究機関に導入実績がある。
さらに今回、世界最大級となる14万4000検体の癌細胞バンクを保有するモレキュラー社と提携し、生体外で癌細胞を3次元培養できる新システムの商品化に乗り出す。膨大な患者由来癌細胞の検体を用いた培養システムを確立することにより、癌の病因研究や新薬開発に役立てる。まず、それぞれ癌種ごとに腫瘍マーカーを決定し、年内にも「セルエイブル・フォー・キャンサーリサーチ」(予定)の商品名で発売したい考えだ。
当面は、米国を中心とした海外販売を狙い、前臨床試験で癌細胞培養プレートの実績を積み重ねる。将来的には、ヒトの臨床試験で活用することも視野に入れる。加藤寛樹社長は「これまでの肝細胞から癌細胞の培養にシフトし、死亡原因トップの癌で勝負したい。プレートを使ってヒトの臨床試験を代替することが最終目標」と話している。