厚生労働省は、現行の「肝炎研究7カ年戦略」(2008~14年度)を見直し、12年度を初年度とする「肝炎研究10カ年戦略」をまとめた。今後の肝炎研究の方向性を示した新たな戦略には、C型肝炎に比べて治療成績が低いB型肝炎の新規治療薬開発を目指し、「B型肝炎創薬実用化研究」を新たな研究課題として盛り込んでいる。
C型肝炎は、難治症例を除いてペグインターフェロンとリバビリンの併用療法の著効率を示す基準の一つSustained Virological Response(SVR)率が約80%となっているのに対し、B型肝炎のインターフェロン(IFN)によるVirological Response(VR)率は約20~30%にとどまっている。
また、B型肝炎でIFNによる治療効果が期待しがたい症例では、逆転写酵素剤を継続投与するが、長期投与による薬剤耐性化が問題となっている。
基礎研究分野では、培養細胞におけるC型肝炎ウイルス増殖系を確立し、安定した動物感染モデルを作製し、臨床応用に向けた研究を実施しているが、B型肝炎ウイルスの細胞培養系は未だ確立されておらず、レセプターも依然として不明であり、感染複製のメカニズムも解明されていない。
こうした状況を踏まえ、10カ年戦略では、B型肝炎創薬実用化研究を重点課題の一つに位置づけ、基盤技術の開発を含む創薬研究や、新規治療薬の実用化に向けた臨床研究を総合的に推進する必要性を指摘。
B型肝炎のVR率改善、HBs抗原の消失を目指し、候補化合物の大規模スクリーニングをはじめ、ウイルス感染複製機構の解明やゲノム解析、HBV感染小動物モデルの開発に関する研究を進める。
来年度からの10年間で、これらの研究課題に集中的に取り組むことで、IFN投与によるB型肝炎のVR率を現状の約20~30%から約40%にまで改善すると共に、1b型の高ウイルス症例のC型肝炎のSVR率を現状の約50%から約80%まで改善させることを目指す。
10カ年戦略は、現行の7カ年戦略が中間年を迎えたことを受け、これまでの研究の進捗状況を評価した上で戦略見直しの検討を行い、新たにまとめたもの。戦略は、5年後に研究の進捗状況を評価した上で見直す。