日本医療機能評価機構は、医療事故情報収集等事業で救急カートに配置された薬剤の取り違え事例が2008年1月から12年2月までに3件報告されているとして、注意を呼びかけている。
同機構によると、いずれもカートに薬剤名がラベルで表示されていたにもかかわらず、別の薬剤を取り出してしまったという。
一つは、気管支鏡検査の際に止血目的でボスミン生食を準備しようと、アンプルの薬剤名を確認せず、カートにある薬剤の仕切りのシールを見て薬剤を取り出した事例。カートの表示をはさんで隣り合っていた硫酸アトロピンをボスミンと取り違えたことが検査の後で分かった。
似たケースでは、硫酸アトロピンを投与すべきところ、隣のワソランを取り出した例も報告されている。
別の事例では、患者がケイレンを起こしたために医師が看護師へ口頭で「セルシン」を指示したが、看護師がカートの表示から「ジゴシン」をセルシンと思い込んで準備し、医師が薬剤を確認せずに注射した。
取り違いが発生した医療機関では、▽救急カート内の薬剤名が識別しやすいように工夫して院内で方法を標準化▽救急カートから薬剤を取り出したり注射器に準備する際に薬剤名を確認する――といった取り組みを実施して、再発防止を図っている。