富士フイルムは米国で抗癌剤の開発に乗り出した。3月中旬から米国のバイオベンチャーであるキャンジェン・バイオテクノロジーズと共同で頭頸部癌治療剤の製剤開発に着手、今後非臨床試験、臨床試験を計画しており、医薬品参入の第1弾になりそうだ。
開発するのはDDS抗癌剤で、写真フィルムで培ったナノ粒子形成技術、薄膜形成加工技術を用いて、頭頸部癌の適応を持つ抗癌剤をゼラチンで包みナノ粒子化することで徐放性を持たせたもの。「抗癌剤包埋ゼラチン」と名付けられており、ジェル剤やクリ”ム剤、フイルムシ”トに含ませての使用が考えられている。
使用されるゼラチンは、ヒトのゼラチン産生遺伝子を酵母に組み込み、培養、精製した。牛由来のゼラチンを使用せず、人獣共通感染症のリスクを少なくした。また、ヒトに対する抗原性が少ないことから、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性も低いとしている。
今後、両社は米国で非臨床試験、臨床治験を実施する。富士は、末期癌患者に対する癌進行の抑制と疼痛軽減作用をもたらす「ターミナルケア薬」としての提供を考えている。なお、日本での開発予定は明らかにしていない。
富士は「メディカル・ライフサイエンス事業」を成長事業の一つと位置づけており、今回の取り組みもその一環。共同開発は、富士が国際技術交流組織である「コスモス・バイオ・ライフ・サイエンス・アライアンス」に加盟し、キャンジェンなどバイオベンチャーに出資してきたことがきっかけとなった。