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厚生労働省医薬食品局は、2008年度医薬関係予算概算要求の概要を公表した。要求額は145億6200万円で、07年度予算額に比べ56億4600万円、63・3%もの大幅な増額要求となった。大幅増になったのは、新型インフルエンザワクチン購入費54億円強を要求したためで、その部分を除くと2億5300万円、2・6%の伸びになる。来年度は、日米欧3極治験相談推進事業や日中韓治験調査対策など、治験に関連する事業を新たに要求する一方、後発医薬品の信頼性確保にも重点的に取り組む。
医薬食品局は概算要求に当たり、[1]有効で安全な医薬品・医療機器を迅速に提供するための対策(要求額:10億2500万円)[2]医薬品等の安全対策の推進(6億0800万円)[3]後発医薬品の信頼性の確保(2億円)[4]医療用麻薬の適正使用の推進(2400万円)[5]薬局機能の強化・薬剤師の資質向上(4億8300万円)[6]麻薬・覚せい剤等対策(3億5200万円)[7]安全、安心な血液製剤の供給確保(7億3100万円)[8]新型インフルエンザワクチン対策(54億4600万円)――の柱を設定した。
このうち、厚労省全体としても重点事項に挙げた「有効で安全な医薬品・医療機器を迅速に提供するための対策」「後発医薬品の信頼性確保」に対しては、局としても重点事項に位置づけ、積極的に取り組んでいく方針だ。
【有効で安全な医薬品・医療機器を迅速に提供するための対策】では、世界最高水準の医薬品・医療機器を、欧米に遅れることなく国民に迅速に提供するため、最適な治験相談・承認審査の実施を目指す。
その一つとして、日米欧3極における医薬品共同治験の相談体制を整備するため、新規に日米欧3極治験相談推進事業(要求額1600万円)を立ち上げ、欧米の治験相談体制の情報収集や規制当局との意見交換を行うと共に、国際共同治験の動向や問題点について調査、検討を進める。
また、日中韓治験調査対策費(3900万円)も新たに計上した。中国・韓国の規制当局及び製薬企業から治験データを入手し、医薬品の有効性、安全性、体内動態に関する民族差の程度や、わが国の承認審査データとして受け入れが可能かどうかについて、科学的に検証する。
重篤な疾患で代替治療法がない場合などに、医師等からの届出により、治験対象外の患者に未承認薬の使用を認める「コンパッショネート・ユース(CU)制度」の検討も始める。導入に向けてCU検討費(1000万円)を要求し、届出に必要な資料や確認方法等の検討、運用上の安全性を確保するために必要な情報の収集を行う。
医療機器についても、医療上のニーズの高い医療機器について、効率的かつ迅速な審査を進めるため、医療機器国際共同開発・承認促進事業費(1300万円07年度予算に比べ700万円増)を要求した。
■市販後の重点監視を強化
【医薬品等の安全対策の推進】では、より安全な医薬品等の提供を図るため、予測・予防型の安全対策へ移行させるなど、さならる強化を図る。
従来から医薬品で進めている市販直後等安全性情報収集事業(2200万円、1000万円増)では、安全性に関する注意を喚起した「重点監視医薬品」について、使用状況や副作用等の臨床現場情報を国が直接収集する監視期間を、従来の6カ月から1年に延長するなど内容を充実させる。さらに医療機器でも医薬品と同様の医療機器市販直後安全使用情報収集事業費(600万円)を新規に要求、6カ月程度の期間、使用状況や不具合発生状況等を国が情報収集する。
■後発薬の品質情報提供も
【後発医薬品の信頼性の確保】に向けては、先発医薬品との同等性など品質確認を行うと共に、後発医薬品の品質情報を提供していく。
後発医薬品品質情報提供等推進費(1億5400万円、5500万円増)を計上し、医薬品医療機器総合機構の後発医薬品相談窓口に、医療現場などから寄せられた後発医薬品の品質に関する意見・質問を検討すると共に、必要に応じて試験検査も行う。さらに、後発医薬品の検査指定品目を拡充すると共に、国による立入検査を実施し、検査結果を公表するための後発医薬品品質確保対策費(4500万円、1500万円増)も要求した。
【新型インフルエンザ対策】では新型インフルエンザの発生に備え、「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき、プレパンデミックワクチンの製造・備蓄を行う。
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