21日に第184回研究会 医療・医薬品情報研究会

2015年05月14日 (木)

 長寿世界一の日本、日本の平均寿命は84才(男性80才、女性87才)高齢化とともにがん・糖尿病・認知症などが大きなテーマになろうとしています。後期高齢者がピークを迎える2025年問題、世界で経験したことのない超高齢社会は人口減少も始まっていて外来通院患者が減少、超高齢社会を支えるために国が提示した概念が「地域包括ケア」です。

 3年後の2018年改定では診療報酬・介護報酬の同時改定があります。医療計画介護保険事業計画・医療費適正化計画などが一斉に見直されますが地域包括ケアに連動した内容となることは確実です。このような環境変化が著しい現在、規制改革をはじめとした適正化・効率化(官僚用語で削除)の波が押し寄せているのです。

 3月12日に行われた規制改革会議公開討論では「医薬分業」が俎上にあげられました。メディアや業界紙等で詳細が述べられていますが、皆さんはどのように感じられたでしょうか。

 今月の講師 赤瀬教授は公開討論の内容に多くの疑問を持たれています。事前に薬歴未記載問題や無資格者のピッキングなどが報道され、薬剤師が劣勢の中での公開討論でしたが、医薬分業の理解度が低いことに大きな課題を残したように思います。具体的な指摘もありましたが、今回の赤瀬教授の講演を聞いていただくと問題の核心に触れることが出来ます。皆様、お誘いの上ご参加ください。

日時

平成27年5月21日(木)15:00~17:00

会場

富士ゼロックスシステムサービス(株)会議室
東京都千代田区神田須田町1-25 JR神田万世橋ビル17階

演題

「薬剤師を取り巻く外部環境の変化と戦略
~敵は誰なのか、そして敵に勝つためにはどうすべきか~」

講師

赤瀬 朋秀氏(日本経済大学大学院教授)

講演要旨

 平成27年1月28日、規制改革会議が「医薬分業における規制の見直し」を取り上げることを決定した。それを受けて、同年2月2日に発行された薬事日報誌には「医薬分業テーマに公開討論」という見出しで取り上げられ、業界には大きな波紋が走ったのは記憶に新しい。しかし、この公開討論には、最初から医薬分業に対する反対意見が恣意的に出されているとしか思えない対応が目立った。我々の業界は、こういった外部環境の変化を察知し、その裏に隠された「意図」から誰が敵なのか見極める努力をしてきたのだろうか。本講演では、外部環境の変化と敵を見極め勝つための戦略について演者の考えを述べたい。本講演の要旨に関しては、薬事日報紙に掲載予定の対談を併せてご覧いただくのがよいと思う。

 そもそも、最初に内閣府が提示した資料の中で、規制改革の検討項目候補の概要(資料3)というファイルの中にライフイノベーション14として「医薬分業の存在意義の再確認と調剤基本料一元化」という項目があった。その中で、医薬分業における規制改革は、患者の利便性の視点で議論されるだけではなく、分業の費用対効果とかジェネリック医薬品のシェアにも及んでいることが記載されている。例えば、「総点数に占める薬剤料の割合は減少しているはずだが、入院外、入院共にここ10年薬剤費のシェアがほとんど変化していない状況を見ると、その経済効果は皆無といわざるを得ない」という記載がある。ここでいう「薬剤費のシェア」なる表現が国民医療費に占める薬剤費の割合ということだったら、開発された新薬の種類や総使用量、薬価など変動要因が非常に多く、「医薬分業の効果が出ていない」と結論付けるのは早急すぎる。

 また、「後発品シフトは期待外れになっている」という記載があり、その根拠として、後発医薬品調剤体制加算を半数近い薬局が算定していないと記載されている。しかし、後発品シフトは失敗していると断言するだけの論拠は極めて乏しい。日本ジェネリック製薬協会のHPには平成26年の第3四半期の数量シェアが50%となっており、どの資料を見てもジェネリック医薬品のシェアは拡大しており、保険薬局が相当努力をしているのは衆目の知るところである。逆に言えば、薬局の半数近くしか後発医薬品調剤体制加算を算定していないのに、これだけの効果が出ているわけだから、それを期待外れとする論拠はないのは明白である。

 ただ、一方で、こういった議論が噴出してきた要因を考えると、保険薬局側にも問題があったと言わざるを得ない。薬歴の未記載問題では、「健康被害がなかった」とするコメントもあったが、裏を返せば薬歴を記録してもしなくても患者の健康状態には関係がないと言っているのと同じである。要は、記録するだけで活用がされていなかったのではないだろうか。こういった内からの課題も真摯に受け止めなければならない。本講演では、これまでの経緯を整理し、そこからスタートする戦略について述べさせていただきたい。

申込み

*参加費:会員(無料)、非会員・当日参加(3,000円)、学生:無料
*定員(50名)になり次第締め切ります。
*出欠連絡は(n_mizuno@ivory.plala.or.jp)まで!
*会員の代理参加が出来ますのでご利用ください。
*当日の連絡先:水野(090-1813-7067)、山口(080-4429-9735)

●当日、薬事日報の対談記事(5/8)を配布します。

主催

医療・医薬品情報研究会

次回のご案内

日時:平成27年6月18日(木)15:00~17:00
講師;尾形裕也氏(東京大学政策ビジョン研究センター教授)
テーマ:医療提供体制改革・地域包括ケア等の方向性



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