ヒューマンサイエンス振興財団(HS財団)は、第46回ヒューマンサイエンス総合研究セミナー「臓器線維症の基礎と臨床―創薬への展望」を12月14日午後0時50分から、東京平河町で開くが、同月10日まで参加者を募集している。
線維化は創傷治癒過程の一つであり、組織を構成している結合組織が異常増殖する現象で、ホメオスタシスを維持する上でも重要な役割を果たしている。しかし、過剰な線維化は、臓器本来の機能を障害し病態形成へと進行させていく。特に肝臓、腎臓、肺の線維化は患者の予後を著しく悪性化し、生命をも脅かす。代表的な線維化疾患として肝硬変、糖尿病性腎症、肺線維症などがあるが、有効な治療法はほとんどない。その原因としては、病態形成メカニズムの多様性、臨床での診断・評価方法が難しいことが挙げられている。
わが国では、突発性肺線維症治療薬としてピルフェニドンに続き、線維化形成に関与する増殖因子(PDGF、FGF、TGF-β)の抑制活性を有し、肺活量の改善が臨床試験でも確認された「ニンテダニブ」が今年承認された。しかし、抗線維化剤はこの2剤しかなく、さらなる有効な薬剤が求められている。
今回のセミナーでは、臓器線維化の分子細胞基盤をベースとしながら肝臓、腎臓、肺の各臓器線維症について研究を進めている者を講師として迎え、最新の研究成果を紹介していく。次の各氏の講演を予定している。
▽臓器線維症の分子細胞基盤=稲垣豊(東海大学大学院医学研究科教授)▽肝の線維化の診断と評価=溝上雅史(国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター長)▽肝硬変等臓器線維症に対するVA-リポソームsiRNA HSP47を用いた治療法の臨床展開=新津洋司郎(札幌医科大学特任教授)▽腎線維化における糸球体―尿細管―間質連関=岡田浩一(埼玉医科大学教授)▽腎線維化と心腎連関=和田隆志(金沢大学教授)
▽病理像から探る肺線維症の病態機序=海老名雅仁(東北薬科大学病院教授)▽インテグリン機能阻害による組織線維化の抑制=横埼恭之(広島大学保健管理センター准教授)▽臓器線維症の治療薬開発:特発性肺線維症へのpirfenidone臨床治験から学ぶもの=貫和敏博(結核予防会常務理事)
セミナーは、2015年度日本医療研究開発機構研究費の創薬基盤推進研究事業の一環として行われる。
詳しくは、同財団ホームページ参照。