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OTC業界の役割、再認識を

2016年06月10日 (金)

 政府の産業競争力会議は今春、名目GDP(国内総生産)600兆円に向けた成長戦略について議論し、これを踏まえて「官民戦略プロジェクト10」を公表した。これは官民挙げて新たな有望成長市場の創出・拡大を目指そうというもので、「この中にはOTC業界に関係する2項目が盛り込まれた。改めてこの重要性を再認識したい」と、日本OTC医薬品協会の杉本会長は総会後の会見で強調した。

 テーマの一つにある「世界最先端の健康立国へ」は、多様な公的保険外サービスを創出しつつ、医療・介護の質や生産性向上、国民の生活の質向上を図っていく。また、革新的な医薬品・医療機器等の開発等により、グローバル市場の獲得を目指す──というもの。

 ここでは個人の予防・健康づくりに向けた行動変容につながるサービスや仕組みの構築が求められたわけだが、これについて杉本氏は「生活者がセルフメディケーションを積極的に実践したくなるような環境づくりが何より重要。OTC薬協がグランドデザインで示し、取り組んでいる活動が国の目指す方向と一致したわけで、これをしっかりと再認識して着実に一つひとつ成果を上げていきたい」とする。

 また、プロジェクトでは「観光立国の実現」も盛り込まれた。この中では、2015年の外国人旅行消費額3.5兆円を、20年に8兆円、30年に15兆円に拡大させるという目標が掲げられている。これに関連し、20年の訪日外国人観光客の目標も4000万人、30年には6000万人にと上方修正されている。

 最近では“確かな品質・安全性”等の面から、日本のOTC医薬品や化粧品、健康食品等のヘルスケア関連品を訪日客が好んで購入する姿をよく目にする。こうしたインバウンド需要に対して、杉本氏は「適切な情報提供体制を整えることで日本ブランドのさらなる浸透、そしてOTC市場の活性化につなげていきたい」とした。

 OTC薬協が昨年5月に策定した「OTC医薬品産業グランドデザイン」は、25年に向け健康長寿社会の一翼を担うための基本戦略、具体的戦術をまとめたもので、15年度はセルフメディケーション税制が公布されたこと、ビタミン含有保健剤の製造販売承認基準の改定に向けた取り組みも順調に進んでいること、そして医薬品等適正広告基準の見直し作業も始まろうとしていることなど、一定の成果が得られたことを挙げる。

 さらに、大手調査機関による15年度の国内OTC市場は、前年比で約104%の伸長というデータも後押しし、「初年度については想定通りの結果を実現できた」と杉本氏は評価する。

 今年度は、特に7項目の重点活動方針を示すOTC薬協だが、25年の目標にもう一歩近づくには、全ての項目で産官学の協力体制あるいは製配販の連携が不可欠となる。今こそ薬業界がこのポジティブな流れを確実に捉え、理解することが必要だ。



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